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認知症へのアプローチ:地域の資源を活かす(博物館編)~見聞した海外での事例紹介④~

認知症にやさしい地域づくりへー創作絵本等から支え合いの輪を広げたい

寄附型
アイコン 挑戦者鈴木尚子 所属徳島大学 人と地域共創センター
支援総額 395,000円
目標金額 2,500,000円
15%
サポーター 48人
残り終了

認知症へのアプローチ:地域の資源を活かす(博物館編)~見聞した海外での事例紹介④~

皆さまこんにちは。挑戦中の鈴木です。クラウドファンディング期間も本年5月11日で終わりとなりますが、本日は認知症に対する地域での取り組み事例の一つとして、博物館の事例をご紹介します。

皆さまは、これまでご自分の人生を振り返って、一番思い出に残っている時期はいつでしょうか。私はこの質問を、「回想法」という自身が担当している授業で、大人の受講者(50~80代)を対象にお尋ねしたことが何度かあります。一番思い出に残っている時期とは、ご自身にとっての記憶が一番多く残っている時期、とも言えるのですが、この質問を概ね40代以上の方に問いかけると、ある傾向が共通してみられます。

以下は、私が所属機関において、過去に社会人の方(50代~80代)向けに実施した授業の際、「これまでの人生を振り返り、よく思い出す時期について、1番目に思い出す時期から3番目に思い出す時期まで、順に回答してください。」という質問を投げかけ、答えていただいた結果を棒グラフで表したものです。縦軸は人数、横軸は時期であり、5年刻みで選択肢を用意しています。
 

スクリーンショット 2025-05-09 173427.png
 

このグラフを見ると、「1番目に思い出す時期」(青い色で着色)として、多くの人が10代後半から20代後半を挙げていることが分かります。母集団がそれほど多くない授業でしたが、これより人数の多い授業でも、逆にこれより人数の少ない授業でも、毎年同じような結果が得られました。また、「2番目に思い出す時期」「3番目に思い出す時期」も含めますと、全体的にみて、10代後半から20代前半に多くの記憶が残っていることも読み取れます。ここでいう記憶とは、「自伝的記憶」と呼ばれる、自分にまつわる思い出深いできごとに関する記憶に分類されうるものですが、必ずしも現在に近いことが先に思い出されるのではなく、10代後半から20代前半の時期を中心に、若い時期のことを思い出される人が多いことが分かります。

さて、この10代後半から20代前半の時期におけるグラフ上の「盛り上がり」のことを、専門用語では「(回想)バンプ」(reminiscence bump)と呼びますが、この傾向は世界的に共通してみられます。なぜこの時期に記憶が多く残っているか、という主な理由として、「初めての経験」(大学進学・一人暮らし・就職・親からの独立・恋愛・結婚等)が多くあることが指摘されています(注)。さて、多くの人の記憶の量がこの時期に多いことを利用し、認知症の人に対するプログラムに活かしている博物館が北欧にはいくつかみられます。本日はそのうちの一つの事例をご紹介します。

北欧には、100年以上の歴史を誇る野外博物館が多く存在しています。そこでの多くにおいては、敷地内にある過去約300~400年の間のさまざまな時代・場所における建物が移築・再現されており、その内外には、当時の衣装を着たボランティアの人びとが実際に動きながらそこで生活をしている様子を実演しています。言葉も、担当するゾーンの時代に使われていた話し方を研修により習得するそうです。店舗では実際に買い物ができ、食べものを作っている家屋では、その食事を来館者も味わうことができます。敷地内では、屋外の地面や街灯、屋内では部屋の至る所に置かれている家具や調度品などのすべてが「本物」であることが重視され、来館者はそれらを自由に手に取ったり触れたりしながら存分に味わえます。そのため、とても臨場感があり、来館者は、いつの間にかその世界に引き込まれていきます。

北欧の野外博物館では、障がい者を対象とした特別なプログラムが長年実施されてきましたが、その実績のもと、近年は認知症の人を対象としたプログラムが実施されている場所も増えてきています。私が訪問した野外博物館における認知症の人を対象としたプログラムでは、来館する人の経歴や希望により、敷地内の多様な場所が利用されます。庭園、対象者の現役時代の職業にちなんだ場所、趣味や関心に近い場所などを巡った後、最後に敷地内にある民家に招待される設定となっており、来館者の記憶の量が一番多い時期に一般的であった衣装に身を包んだ女性が出迎えてくれます。室内では、訪問する認知症の人の関心・経歴に近いモノや、記憶の量が多い時期に流行したさまざまなモノが各部屋に置かれるなど、個別性も重視されています。高齢者施設からの訪問で、対象者が複数の場合、概ね平均してその人びとが10代後半から20代前半だった時期(「バンプ」)に焦点をあてることが多いようです。各部屋で懐かしいモノを味わった後、最後にリビングルームに移動し、着座して思い出の写真を見たり、当時の歌を唄ったりしながらリラックスしてお茶の時間を過ごします。そうしているうちに、認知症の人の多くに徐々に記憶が鮮明によみがえり、表情が明るくなり、(意味ある文脈で自身と周囲を認識した上で)感情を表したり、(ほとんど言葉を発しなかった人が)急に昔のことを詳細に語りだしたり、周囲の人に関心を寄せたり、思い出の歌を唄いだしたり、自尊心を回復したり…といった著しい変化がみられることが報告されています。こうした変化は、対象者の日常生活の中ではなかなかみられないものであり、博物館が五感に訴える場をリアルに再現してくれるからこそ起こりうるものとして、このプログラムは地域で高く評価されています。

このようなプログラムを成功させるため、博物館のスタッフは、その労苦をいとわず、プログラムの実施前に対象者にとって効果的な時代背景、その頃に一般的だった家具・調度品、経歴や関心などについて細部まで丁寧に調べ、家族や高齢者施設の職員とも綿密に打合せを行い、入念に準備します。「本物」にこだわるため、地域の人に協力してもらうこともあれば、あるモノを入手するために近隣国まで出かけることもあるそうです。高齢者施設の職員からもお話を伺いましたが、博物館側にプログラムへの参加費を支払うが、それ以上の価値がある、として、参加する意義を認めておられるようでした。

日本に帰国後、いくつかの野外博物館を訪問しましたが、ほとんどの場所で建物のみが展示されており、無人であるだけでなく、「展示物に触れないでください」「飲食禁止」「中に入らないでください」といった禁止事項の文字ばかりが目につき、また家具調度の置かれ方に臨場感を伴っているものが少ないことに気がつきました。潜在的な物的資源は日本にも多くあるにもかかわらず、それらが十分に活かしきれていないのです。もっと効果的に、これらは活かしうる価値がある、と感じましたが、同時に、そのためには、それらを操る人的資源が介在しなければなりません。

もちろん、全国的に回想法が行われている博物館も増えてきましたし、それぞれの場所にある資源が効果的に活かされている場所もあります。しかし、より効果的に、さらに五感に訴えるしかけがあってもいいのではないでしょうか。おそらく今の高齢者が10代後半から20代前半だった昭和時代の物品は、昭和の日常品を扱う博物館だけでなく、全国各地の家屋に眠っているものも多くあるかもしれません。そして、それらを活かすため、どんなふうにそれらが当時使われていたのかを再現できる人的資源についても、元気な高齢者にボランティアとして協力を依頼することは、さほど難しくないのではないでしょうか。また、野外博物館でなくとも、全国各地に昭和時代を再現できる場所は数多くあるのではないでしょうか。問題はいかにそれらを総合的に統率し、実践していくかということです。私見ではありますが、医療・福祉関係者だけでなく、北欧のように、教育関係者やその他領域の関係者がもっと主体的に関わっていくことで、そこでの学びの効果をより高めることができるように思われます。

私自身もこのことに対し、今後も主体的に関われるよう努力していきたいと思っています。

鈴木先生0509.png

デンマーク・オーフス市にある野外博物館敷地内(入り口付近)の様子。中世の時代の人びとをボランティアが当時の衣装を着て実演しています。この中には、知的障がいのある人も含まれますが、こうした格好をすると表情がいきいきしてくることから、かれらの精神的解放も意図されているようです。

鈴木先生0509_2.png

上記博物館の1974年以降のエリアにある“記憶の家”の外観。この建物の2階で認知症の人向けのプログラムが実施されています。以上の写真は、2017年の訪問時に筆者撮影。

注 
Wolf, T., & Zimprich, D. (2020). What characterizes the reminiscence bump in autobiographical memory? New answers to an old question. Memory & cognition, 48(4), 607–622.

 

寄附受入情報

徳島大学

本プロジェクトに寄付をしていただいた方には、国立大学法人徳島大学から寄付の領収書をお送り致します。国立大学法人への寄付になりますので、確定申告の際に領収書を提出することで税の優遇措置を受けることができます。大切に保管下さい。詳細は本文の「国立大学法人徳島大学への寄付と税制について」をご参照ください。また、このプロジェクトはクレジットカード決済以外に振込によるご寄付も受け付けています。詳細は本文の「振込によるご寄付について」をご参照ください。

このプロジェクトはオールイン型ですので、目標金額の達成状況によらず支援が実施されます。

1,000円(税込み)
無制限

お礼のメールコース

ご支援いただいた方へ、お礼のメールをお送りいたします。

リターン内容

  • お礼のメール
サポーター11人
残り終了
終了
3,000円(税込み)
無制限

お礼のハガキコース

ご支援いただいた方へ、直筆でお礼のハガキをお送りいたします。

リターン内容

  • お礼のハガキ
サポーター8人
残り終了
終了
5,000円(税込み)
無制限

お礼の手紙コース

ご支援いただいた方へ、直筆でお礼の手紙をお送りいたします。

リターン内容

  • お礼の手紙
サポーター5人
残り終了
終了
10,000円(税込み)
無制限

絵本1冊コース

ご支援いただいた方へ、出版後、絵本1冊をお送りします。絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。複数冊を希望される方は、複数口数でお申込みください。

リターン内容

  • 絵本1冊
  • お礼のメール
サポーター21人
残り終了
終了
15,000円(税込み)
無制限

あなただけのお名前入り絵本1冊コース(おススメ!)

ご支援いただいた方へ、奥付にあなただけのお名前を、著者名、絵本作家名の後に印字させていただいた絵本を、出版後に1冊お送りします。クラウドファンディング期間だけの特別サービスになります。
記載例:著者名、絵本作家名、「ご支援者:○○ ○○様」(他の支援者名は入りません)
絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。

リターン内容

  • あなただけのお名前入り絵本1冊
  • お礼のメール
サポーター3人
残り終了
終了
50,000円(税込み)
無制限

あなただけのお名前入り絵本5冊コース(おススメ!)

ご支援いただいた方へ、奥付にあなただけのお名前を、著者名、絵本作家名の後に印字させていただいた絵本を、出版後に5冊お送りします。クラウドファンディング期間だけの特別サービスになります。
記載例:著者名、絵本作家名、ご支援者名:〇〇 〇〇様(他の支援者名は入りません)
印字の不要な方は、その旨を備考欄にお書き添えください。絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。

リターン内容

  • あなただけのお名前入り絵本5冊(希望者のみ)
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了
100,000円(税込み)
無制限

著者による絵本読み聞かせ・児童向け啓発事業の相談対応等の開催権付与コース

ご支援いただいた方へ、著者自身の絵本読み聞かせ及び児童向け意識啓発活動もしくは相談会(約1時間程度)の開催権を付与します。詳細については、プロジェクト終了後、相談に応じます。※但し、対象者を10名以上と場所を支援者側でご準備いただけることに加え、(徳島県以外の方は)交通費・(必要な場合)宿泊費・会場借用費を支援者自身でご負担いただくことが前提となります。絵本の送付は別となりますので、絵本も希望される方は別のコースも同時にお申し込みください。

リターン内容

  • 著者による絵本読み聞かせ・児童向け啓発事業の相談対応等の開催権付与
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了
200,000円(税込み)
無制限

著者による出張講演・セミナー・ワークショップ等の開催権付与コース(社会人向け)

ご支援いただいた方へ、著者による出張講演・セミナー・ワークショップ等(約2時間程度)の開催権を付与します。詳細については、プロジェクト終了後、相談に応じます。※但し、徳島大学以外で開催を希望される場合、対象者を10名以上と場所を支援者側でご準備いただけることに加え、(徳島県以外の方は)交通費・(必要な場合)宿泊費・会場借用費を支援者自身でご負担いただくことが前提となります。絵本の送付は別となりますので、絵本も希望される方は別のコースも同時にお申し込みください。

リターン内容

  • 著者による出張講演・セミナー・ワークショップ等の開催権付与
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了
300,000円(税込み)
無制限

応援30万円コース

本プロジェクトを応援していただきます。(希望者には絵本30冊まで、ご希望に応じて送付しますので、備考欄に希望冊数をお書きください。また、希望される方には、奥付に支援者名を印字させていただきますので、併せてお書き添えください。)絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。

リターン内容

  • 応援30万円コース
  • 出版後に絵本30冊まで
  • 希望者には絵本奥付にお名前印字
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了
500,000円(税込み)
無制限

応援50万円コース

本プロジェクトを応援していただきます。(希望者には絵本50冊まで、ご希望に応じて送付しますので、備考欄に希望冊数をお書きください。また、希望される方には、奥付に支援者名を印字させていただきますので、併せてお書き添えください。)絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。

リターン内容

  • 応援50万円コース
  • 出版後に絵本50冊まで
  • 希望者には絵本奥付にお名前印字
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了

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