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「認知症にやさしい地域づくり」について~見聞した海外の事例紹介②~

認知症にやさしい地域づくりへー創作絵本等から支え合いの輪を広げたい

寄附型
アイコン 挑戦者鈴木尚子 所属徳島大学 人と地域共創センター
支援総額 426,000円
目標金額 2,500,000円
17%
サポーター 51人
残り終了

「認知症にやさしい地域づくり」について~見聞した海外の事例紹介②~

こんにちは。挑戦中の鈴木です。

本日は、このプロジェクトのテーマにもなっている「認知症にやさしい地域づくり」について、私自身が海外で見聞したことをもとにご紹介したいと思います。

「認知症にやさしい(dementia-friendly)地域」と聞くと、文字どおり「認知症の人にやさしい/認知症の人の視点に立った/認知症の人が暮らしやすい地域」という意味だと受け取られる人が多いと思います。もちろん、そのように受け取ることも正解に含まれますが、具体的にどういうことを指すのか、と想像することは容易ではないかもしれません。

高齢化の進む主要国のアルツハイマー病協会や、国際アルツハイマー病協会などの団体が、その定義や昨今の動向をホームページや報告書などにまとめていますが、その解説は必ずしも同じではなく、複数の解釈が存在しています。国際アルツハイマー病協会によれば(注1)、この用語は、二つの異なる、しかし相互に補完し合う目的を持っているとされています。一つは人びとの中にある認知症への偏見や先入観を減らし、正しく理解できるよう啓発していくこと、もう一つは認知症とともに生きる人びとが自分の生活に関する意思決定を自身で行えるよう支援していく(勇気づけていく)ことであるとしています。また、世界保健機関(WHO)においては、「認知症を包摂する(dementia-inclusive)」といった表現も近年は使用されているようです。

私が本日ご紹介する活動にも関連する英国のアルツハイマー病協会のホームページによれば、ある一つのレベルにおいては、「認知症にやさしい」という定義は、認知症の人とそのご家族がより良い生活を送れるように、地域に暮らす皆で働きかけること、というようにとらえることができると説明しています。しかし、それだけではなく、この概念の枠組みは、認知症とともに生きることについて、私たちの考え方を変える力を持っているとも説明しています。その枠組みは、使用する言語、社会的支援、認知症を含む保健・福祉サービス、物理的環境などの向上を含む、広範な領域に及ぶものである、と指摘しています。こうした一般的に示される説明に加え、「認知症にやさしい地域づくり」が進んでいる地域の一つである、英国・イングランド北部のBradford(注2)という街を2017年に私自身が訪問し、同協会関係者より見聞した話として、次のことを記憶しています。

「私たちは、認知症にやさしい地域づくりにおいて、何か一つの、絶対的な目標に向かって活動しているのではない。認知症の人が少しでも地域で暮らしやすくなるように、地域の異なる立場に置かれたあらゆる人びとが、認知症当事者の意見を聴きながら協力し合い、より良い地域社会の構築に向けて働きかけている、その状況自体をこの用語が意味するものとして使用している。」

つまり、異なる立場の人びとが意見交換しながら、より良い地域に向けて活動している、その過程を含めた状況そのものを指しているというのです。この話を広げていくと、とても短い紙面では収められそうにないため、今回はその中でも特にこの街で印象的であった、物理的環境の向上について、その一端をご紹介したいと思います(以下の写真の撮影場所はBradfordの中心街であり、撮影者は私自身です)。

まず、この街では、すべての店舗や公共空間の表示が色分けされ、とても大きな文字やピクトグラムで示されています。また、街中の至る所に大きな地図が示されており、認知症の人が参照するだけでなく、周囲の人が助けやすいような工夫も施されています(写真1)。

スクリーンショット 2025-04-28 122257.png

次に、バス停では、赤い線が中央部に引かれていることで、他の場所と区別しやすくなっており、ショッピングモールでは、目的別の行き先が矢印で示されています(写真2)。

スクリーンショット 2025-04-28 122543.png
 

また、店舗の内部においても、認知症の人が必要なものを見つけやすいよう、カテゴリーごとに大きな表示が壁の上部に示されています。また、お勘定の場所は特に混乱しやすいため、壁の上部がさらに別の色で示され、より分かりやすく表示されています(写真3)。

スクリーンショット 2025-04-28 122724.png

これらは、実際に活動をしている人びとが、認知症の人とともに街中を歩き、それぞれの場所で意見を聴きながら、改善を図っていったとのことです。こうした物理的環境だけでなく、そこで働く従業員にも、どのように対応すべきかといった研修が提供されるなど、ハード・ソフト両面での配慮が払われています。このほか、エレベーター内の行き先の階数・開閉を押すボタンが、通常のボタンとは別に、10センチ四方ほどの大きめのボタンも併せて腰の高さ辺りに横長に設置されている建物を見かけることもありました(これは、日本の一部銀行でも導入されているようです)。また、カフェでは、ラテ・マキアート・カプチーノ・フラットホワイトなどの異なった種類の飲料がそれぞれどう違うのかについて、材料と分量をもとに図で色分けし、大きく示したメニューを見かけることもありました。こうした工夫や配慮は、やり過ぎるとデザイン性を損なうため、バランスが重要なのだそうです。

最後に、中心部の道路には、自動上昇柱(automatic bollards)と呼ばれる装置が人通りの多い場所を中心に設置されており、またそれが設置されていることを運転手に注意喚起するための柱もその手前に設置されていました。こうした配慮により、交通事故を未然に防ぐ努力が払われています(写真4)。

スクリーンショット 2025-04-28 122958.png

さて、私はこの街に約1週間滞在する中で、あることを強く感じました。それは、この街は、私のような、この街の住人ではない、ふらっと立ち寄った外国人にとっても分かりやすく、過ごしやすいのではないか、ということです。どこに行くにも、何をするにも、表示が分かりやすく、行動が容易であり、またどこに行っても、地域の人びとがとても親切に対応してくれます。そのことを、上記のカッコ書きで示した、この活動を推進している当地のアルツハイマー病協会の人に聞いてみました。つまり、「認知症にやさしい地域」とは、究極的に「誰にとってもやさしい(使いやすい/過ごしやすい)地域」を目指しているのではないのか、ということです。そうしましたところ、確かに認知症を発症し、困っている人の割合が多く、彼らの意見を聴きながらこの活動を進めているため、その用語がスローガンのように用いられてはいるが、実際は、彼らの悩みや心配ごとの多くは、それ以外のさまざまな事情により困っている人びとにも共有されているものであるから、あなたがそう思っても不思議ではない、という回答でした。この街での滞在を終え、自身の経験を通じてそのことを確信できるようになりました。

以上の経験などから、私が今回クラウドファンディングの題目にも掲げている「認知症にやさしい地域づくり」も、認知症とともに生きる人が、住み慣れた地域でできるだけ長く暮らしていくために、周囲の人びとの間で支え合いの輪を広げていく、といった意味合い以外にも、そうした活動を通じて、最終的にはすべての人びとを対象に、困った時には互いに支え合える地域社会の実現を目指す、という意味合いで使用しています。そして、作成中の絵本にも、この考え方を反映させています。このように認知症は、異なるさまざまな立場の人びとをつなげ、互いに必要な際に助け合える状況をハード・ソフトの両面で構築していく際に、「触媒」としても働きうる機能があることを近年は痛感しています。私自身は、教育という限られた側面ではありますが、自身の専門性から、認知症の人が地域で学び続けられるように、そして周囲の人が認知症の人に温かく、やさしく接することができるように、微力ながら今後も尽力してまいりたいと思っています。

クラウドファンディングも残り2週間程度となりましたが、引き続き最後までどうぞよろしくお願いいたします。

注1 国際アルツハイマー病協会ホームページ(2025.4.27閲覧)
https://www.alzint.org/what-we-do/policy/dementia-friendly-communities/

注2 英国・イングランド北部の街Bradfordは、認知症ケアの基本ともいわれるパーソンセンタード・ケア(Person-Centred Care)を提唱したトム・キットウッド(Tom Kitwood)氏にゆかりのある場所でもあり、認知症の初期診断率がとても高く、認知症に対する一般市民の意識がとても高い地域です。

寄附受入情報

徳島大学

本プロジェクトに寄付をしていただいた方には、国立大学法人徳島大学から寄付の領収書をお送り致します。国立大学法人への寄付になりますので、確定申告の際に領収書を提出することで税の優遇措置を受けることができます。大切に保管下さい。詳細は本文の「国立大学法人徳島大学への寄付と税制について」をご参照ください。また、このプロジェクトはクレジットカード決済以外に振込によるご寄付も受け付けています。詳細は本文の「振込によるご寄付について」をご参照ください。

このプロジェクトはオールイン型ですので、目標金額の達成状況によらず支援が実施されます。

1,000円(税込み)
無制限

お礼のメールコース

ご支援いただいた方へ、お礼のメールをお送りいたします。

リターン内容

  • お礼のメール
サポーター11人
残り終了
終了
3,000円(税込み)
無制限

お礼のハガキコース

ご支援いただいた方へ、直筆でお礼のハガキをお送りいたします。

リターン内容

  • お礼のハガキ
サポーター8人
残り終了
終了
5,000円(税込み)
無制限

お礼の手紙コース

ご支援いただいた方へ、直筆でお礼の手紙をお送りいたします。

リターン内容

  • お礼の手紙
サポーター5人
残り終了
終了
10,000円(税込み)
無制限

絵本1冊コース

ご支援いただいた方へ、出版後、絵本1冊をお送りします。絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。複数冊を希望される方は、複数口数でお申込みください。

リターン内容

  • 絵本1冊
  • お礼のメール
サポーター22人
残り終了
終了
15,000円(税込み)
無制限

あなただけのお名前入り絵本1冊コース(おススメ!)

ご支援いただいた方へ、奥付にあなただけのお名前を、著者名、絵本作家名の後に印字させていただいた絵本を、出版後に1冊お送りします。クラウドファンディング期間だけの特別サービスになります。
記載例:著者名、絵本作家名、「ご支援者:○○ ○○様」(他の支援者名は入りません)
絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。

リターン内容

  • あなただけのお名前入り絵本1冊
  • お礼のメール
サポーター4人
残り終了
終了
50,000円(税込み)
無制限

あなただけのお名前入り絵本5冊コース(おススメ!)

ご支援いただいた方へ、奥付にあなただけのお名前を、著者名、絵本作家名の後に印字させていただいた絵本を、出版後に5冊お送りします。クラウドファンディング期間だけの特別サービスになります。
記載例:著者名、絵本作家名、ご支援者名:〇〇 〇〇様(他の支援者名は入りません)
印字の不要な方は、その旨を備考欄にお書き添えください。絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。

リターン内容

  • あなただけのお名前入り絵本5冊(希望者のみ)
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了
100,000円(税込み)
無制限

著者による絵本読み聞かせ・児童向け啓発事業の相談対応等の開催権付与コース

ご支援いただいた方へ、著者自身の絵本読み聞かせ及び児童向け意識啓発活動もしくは相談会(約1時間程度)の開催権を付与します。詳細については、プロジェクト終了後、相談に応じます。※但し、対象者を10名以上と場所を支援者側でご準備いただけることに加え、(徳島県以外の方は)交通費・(必要な場合)宿泊費・会場借用費を支援者自身でご負担いただくことが前提となります。絵本の送付は別となりますので、絵本も希望される方は別のコースも同時にお申し込みください。

リターン内容

  • 著者による絵本読み聞かせ・児童向け啓発事業の相談対応等の開催権付与
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了
200,000円(税込み)
無制限

著者による出張講演・セミナー・ワークショップ等の開催権付与コース(社会人向け)

ご支援いただいた方へ、著者による出張講演・セミナー・ワークショップ等(約2時間程度)の開催権を付与します。詳細については、プロジェクト終了後、相談に応じます。※但し、徳島大学以外で開催を希望される場合、対象者を10名以上と場所を支援者側でご準備いただけることに加え、(徳島県以外の方は)交通費・(必要な場合)宿泊費・会場借用費を支援者自身でご負担いただくことが前提となります。絵本の送付は別となりますので、絵本も希望される方は別のコースも同時にお申し込みください。

リターン内容

  • 著者による出張講演・セミナー・ワークショップ等の開催権付与
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了
300,000円(税込み)
無制限

応援30万円コース

本プロジェクトを応援していただきます。(希望者には絵本30冊まで、ご希望に応じて送付しますので、備考欄に希望冊数をお書きください。また、希望される方には、奥付に支援者名を印字させていただきますので、併せてお書き添えください。)絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。

リターン内容

  • 応援30万円コース
  • 出版後に絵本30冊まで
  • 希望者には絵本奥付にお名前印字
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了
500,000円(税込み)
無制限

応援50万円コース

本プロジェクトを応援していただきます。(希望者には絵本50冊まで、ご希望に応じて送付しますので、備考欄に希望冊数をお書きください。また、希望される方には、奥付に支援者名を印字させていただきますので、併せてお書き添えください。)絵本の出版は、2025年中を予定しており、出版社から直接送付させていただきます。

リターン内容

  • 応援50万円コース
  • 出版後に絵本50冊まで
  • 希望者には絵本奥付にお名前印字
  • お礼のメール
サポーター0人
残り終了
終了

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