徳島大学病院 救急集中治療部
中西信人
総サポーター数:19人
累計支援額:374,000円
研究内容
筋萎縮ゼロプロジェクトー誰もが社会復帰を実現するためにー
徳島大学病院 救急集中治療部 研究員の中西信人です。
救急集中治療医として、呼吸とリハビリを専門として、多職種連携で重症患者さんの社会復帰を目指しています。
私は毎日ICUで医師として患者さんの治療・研究を行っています。その過程でICU入室した重症患者さんが、急激な筋萎縮をきたすことがわかってきました。
入室した患者さんは回復しても、治療中の筋萎縮でその後の社会復帰に影響がでます。医学の発展により病気が治るようになってきましたが、患者さんが自分の人生を歩める、社会復帰の必要性を痛感しています。
このように患者さんが社会復帰できない状態をPICS(Post Intensive Care Syndrome:集中治療後症候群)といいます。重症患者さんがPICSにならず、社会復帰できるように筋萎縮の予防が必要と考えます。
筋萎縮ゼロプロジェクトでわかってきたこと
私は、2020年1月に重症患者さんの社会復帰を目指して【筋萎縮ゼロプロジェクト】を始めました。その開始がクラウドファンディングへの挑戦でした。
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プロジェクト名: 筋萎縮ゼロプロジェクト~ICUの患者さんにもう一度社会復帰してもらいたい~
支援期間: 2020年1月20日~2020年3月27日
サポーター数: 94人
支援金額: 2,478,000円
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このご支援により、論文9報、総説2報、集中治療医学会での論文賞、奨励賞の受賞を得ることができました。
今までの研究で重症患者さんの筋萎縮が1週間で約20%近く進行することが分かりました。また超音波や尿中のタイチンという物質を用いて筋萎縮の評価が可能であることを報告してきました。
さらに神経筋電気刺激療法という他動的に筋肉の収縮を誘発するリハビリ機器を上肢と下肢に使用することで上肢と下肢の筋萎縮の予防が可能なこと、さらに入院期間が短縮することを報告しました。
筋萎縮ゼロプロジェクトの継続・発展
現在では振動を用いたリハビリ機器にて筋萎縮の予防が可能か研究を行っております。
さらには重症患者のみならず脳卒中やその他の救急疾患でも筋萎縮の診断、予防が可能か日々研究しております。
今後の筋萎縮ゼロプロジェクトでは様々な科と協力してICUの重症患者のみならず、子供から大人まで様々な疾患の患者さんの筋萎縮ゼロを目指して協力していきます。また栄養士、理学療法士、看護師と多職種でさらに協力することで筋萎縮のさらなる予防に努めていきます。
最近では徳島のみでなく、全国のグループで萎縮予防に向けた取り組みの展開を行っています。具体的には筋萎縮のモニタリングをいかに正確に行うかの雑誌の執筆活動を全国の仲間と行い、筋萎縮予防の方法を全国に普及させています。
日本集中治療医学会の「PICS対策・生活の質改善検討委員会」の一員としても、一人でも多くの患者さんの社会復帰を目指す活動を行っております。さらにはオンライン講習会を通じて筋萎縮のモニタリングや予防に関する教育活動にも力を入れております。
メッセージ
今までは臨床研究のみを行ってきましたが、動物実験なども行い、筋萎縮予防のための基礎的な研究もどんどん発展させていきたいと考えております。
筋萎縮ゼロプロジェクトの1つであるクラウドファンディングを終えた2020年の3月あたりから、COVID-19の感染拡大が世界中に広がりました。医療現場は、誰もが体験したことのない過酷な状況下であります。その中でもICUは必要不可欠な場所となってきました。当たり前の医療が、研究が、教育が大きく変化しています。
COVID-19で重症化した患者さんは10日間で約30%の筋肉が萎縮することも分かってきました。COVID-19に感染した後に多くの患者さんがPICSを経験します。近年の報告では退院1年後でさえも約7割の患者さんが、身体機能に障害があるということも分かってきました。COVID-19においても筋萎縮をゼロにすることは喫緊の課題です。
何度でもいいます。入室した患者さんは回復しても、治療中の筋萎縮でその後の社会復帰に影響がでます。患者さんが自分の人生を歩める、社会復帰の必要性を実現していくために、医療に関わる全ての診療科や医療関係者が「筋萎縮」について共通の認識をもてるようになることは、多くの方々に有益であると確信しています。
誰もが社会復帰を実現するために、PICSにならないために、すなわちより多くの方が社会に復帰できる筋萎縮のない社会を目指していきます。よろしくお願いいたします。
研究ニュース67
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