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徳島大学先端酵素学研究所

片桐 豊雅

総サポーター数:2人

研究内容

がん細胞にブレーキを。ゲノム研究の成果をがん患者に届けたい!

傷がないのに働かないブレーキ

細胞は車に例えられます。正常な細胞では、アクセル役の遺伝子が働くと細胞は分裂します。
つまり車は進みます。
一方、細胞の分裂を止める際には、ブレーキ役の遺伝子が働きます。
つまり、車を赤信号ではブレーキを踏んで停めるということです。

これらのアクセルやブレーキ役の遺伝子に傷がついて異常をきたす、故障してしまうと細胞が無限に分裂する、つまり車が暴走してしまうわけです。
この状態が「がん細胞」です。

遺伝子に傷がつくというのは、生きている中で、偶然に起こることで、どこに傷がつくかということはよくわかっていません。
そこで、がんに関係する遺伝子を新たにみつけるために、多くのがんの患者さん方のご協力を得て、手術でとったがんの組織のがん細胞中の全ての遺伝子のうち、どの遺伝子に傷がついているか、どの遺伝子が活発に働いてるかを調べてみました。
すると、興味深いことに、これまで多くの研究にてがんに関係することがわかっていたブレーキ役のある遺伝子には、全てのがんの患者さんのがん細胞を調べても、傷がついていないことがわかりました。

新しい発見

多くのがん研究者は、傷がつくことによって、活発に働くアクセル役の遺伝子について研究を進めているのですが、暴走している車なのに何故ブレーキが壊れていないのか?私達は、そこに着目しました。

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ここで、遺伝子とは、タンパク質をつくる設計図を意味します。

今回着目した「傷のついていないブレーキ遺伝子」によって作られるタンパク質が、がん細胞の中でどのように働いているかを詳しく調べてみると、がん細胞だけでつくられているある別のタンパク質が、この無傷なブレーキタンパク質にくっついて、ブレーキ機能を抑え込んでいたことがわりました。

これまで、このような現象を聞いたことがありませんでしたので、非常に驚きました。

つまり、遺伝子の異常を積み重なることでがんになるというこれまでの概念とは異なる現象があるということに驚きを隠せませんでした。

治療を考えた場合には、その別のタンパク質から、ブレーキをはずしてやればいいのでは?という発想で、実際にそのタンパク質をブレーキから離すことができると、考えていた通り、ブレーキが働くようになりました。

そして、さらに驚くことに、がん患者さんに実際に使用されている治療薬が効かなくなっていたがん細胞にも効果があることがわかりました。
その実験結果を見た瞬間は、とても感動しました。
現在はそれを治療薬として実際に患者さんのために使えるように研究を続けています。

自己紹介

私は徳島大学先端酵素学研究所で教授をしております、片桐豊雅と申します。
基本的には、がんを対象に研究しており、がんがどうしてできるのかというメカニズムを調べて、最終的には患者さんのためになる治療薬などをつくりたいと考えています。

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研究者を生業とした理由 ~唯一入れた農学部での経験~

きっかけはもう覚えていないのですが、小学生の頃の文集には「科学者になりたい」と書いてありました。
おそらく父や祖父と話をしていた影響を受けたのだと思います。
出身大学は、香川大学農学部です。イネを対象として、多収穫にするのにはどうすればよいのかという、育種学の研究をしていました。

高校生の頃は、自分の学力が足りないことを別にして、医学部に行きたかったという思いは少しありました。
しかし、その時代はタブー視されていたことなのですが、実は私は「色覚異常」を持っており、私の大学受験時には、ほとんどの理系の学部は受験資格がありませんでした。
その頃、唯一受験ができたのが、合格した農学部農学科でした。
でも、実際には、学力が足りなかったというのが、一番大きな原因ですけどね。(笑)

ただ、漠然とではありますが、研究者になりたいという思いは、高校時代も大学に入学してからも持っておりました。

研究人生のスタート

大学生時代に、研究人生に大きな影響を与える出来事がひとつありました。
大学院修士2年の時に、所属研究室の教授が海外留学のために、1年近く不在にすることがありました。
当時私が研究室で、最年長であったことから、研究室所属の下級生の世話などを行わなければならなくなってしまいました。

自分自身の研究については、共同研究をすすめていただいていた県外のお二人の先生の研究室まで、頻繁に足をはこび、ご指導を仰ぎながら研究をすすめ、また、研究室の後輩の面倒をみたりと、四苦八苦していたことを思い出します。

この頃、新しい実験、そして新たな研究に取り組むことにわくわくし、気持ちが昂揚していたことをはっきりと覚えています。
この貴重な経験により、大学院生にして、指導教授の素晴らしさや研究室運営の大変さ、人間関係の重要さ、そして、研究をすすめることの難しさや研究に真摯に取り組むことの大切さを大いに学ぶことができました。
そして、この頃に非常に明確に「研究を生業とした職業につきたい」と強く思いました。

がんの研究を始めました

大学院修了後は、就職先を医歯薬学に目を広げて、バブル時代という背景も手伝って、大塚製薬に就職することができました。
そのときに最初に配属されたのが、がんの診断薬を開発する部署でした。
ここで、はじめて、がん研究にかかわることになりました。

入社して、1年半ほど経過した頃に、会社の上司から、「東京の癌研究所で乳がんの遺伝子診断をはじめるので、学んで来てくれないか」と出向命令がありました。
私もがんを勉強したい気持ちがありましたので、2つ返事で了承し、東京の癌研究所(その当時財団法人癌研究会)へ行くことになりました。
そして、がんゲノム研究の世界的第一人者である、中村祐輔先生(現がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長)と出会いました。

実験台でやっていることを、患者さんのもとへ

中村祐輔先生は、非常に厳しい先生でした。医学研究に取り組む姿勢、科学的な考え方を根本からご指導していただきました。
私がそれまで触れてきた研究というものが、研究と呼べるものではないことをこの時期に実感しました。

特に、「Bench to Bedside (実験台から患者さんのベッドサイドまで)」という言葉を骨の髄までご指導いただきました。
「今目の前にあるものを実験材料として見るのではなく、その背景には患者さんがいることを意識して、実験台でやっていることを患者さんのところへ届けられる研究を進めなさい」という意味です。
このことに、農学部出身である私は、非常に感銘を受け、医学研究の大切さと、その大変さを感じたことを今でも覚えています。

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中村研究室には、全国から多くの優秀な医師、研究者が集まってきていました。
この頃は、周りについていくのに、本当に、毎日いっぱいいっぱいでした。
しかし、高い研究レベル、そして高い意識を持つ人達と一緒に仕事をすることで、日々自分の至らなさがわかり、そして、自分の能力が上に引き上げられていくような感覚がありました。

その後、大塚製薬に一旦戻ったのですが、中村先生に、癌研究所で一緒に研究をやらないかとお誘いいただき、もう一度癌研究所で働くことにしました。

その後、2年半ほどのイギリス留学を経験し、再度、東京大学に異動された中村祐輔先生の研究室にて8年ほど勤めた後、2008年秋から徳島大学にて、自分の研究室をもって研究するようこととなりました。
そして今に至ります。

がんになった友人に何も言えなかった

実は、私のがん研究において、大きな影響を与えていることがもうひとつあります。

2度目に癌研究所に異動した頃、高校時代の親友から突然の連絡がありました。
腎臓がんが見つかったという話でした。

私ががんの研究をしているということを知っていましたので、私の話を聞いてみたいと言うのです。
そのとき私はまだがん研究を始めたばかりの駆け出しで、その友人にどう話をすればよいのかわかりませんでした。

そして、何もできない自分に非常にショックを受けました。
日々、何とかできないかと思いましたが、その数年後に、彼は亡くなりました。

この後、より患者さんのための研究を強く意識するようになりました。
その出来事は、私の中で非常に大きく、その後のがん研究への思いに強く影響しています。

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アポロ計画よりも難しいと言われた、当時のゲノム解析計画

私達の体は、お父さんの精子とお母さんの卵子が受精してできた受精卵1個が分裂、分化を繰り返し、最終的には37兆個もの細胞からできています。
つまり、体中の細胞の1つ1つは、お父さんとお母さん由来の遺伝情報を一対ずつ持っていることになります。この遺伝情報全体のことを「ゲノム」と言います。
このゲノムは、生命の設計図のようなイメージです。
この設計図であるゲノムの中で、タンパク質を作る設計図の部分を遺伝子といいます。
正確にはゲノム=遺伝子ではありません。

ゲノムと遺伝子

このタンパク質を作る設計図である遺伝子は、ヒトでは2万3千個ありますが、このゲノムのうち、この遺伝子の部分はわずか数%程度であることがわかっています。
私がこの世界に入ってきた当時は、タンパク質を作らない遺伝子以外の部分は何を意味しているのかよくわかっておらず、意味のない、ごみのようなものと考えられていたのですが、今では遺伝子以外の部分も生命において非常に大切であることがわかってきています。

30億個の塩基記号の解読

このゲノム(遺伝情報)は、お父さん、お母さん由来の情報をもつDNAでできていて、それはA、T、G、Cという4種類の記号が30億個も並んでできています。
私が癌研究所に出向した時代は、このATGCの並びがどのように並んでいるかを決めることはほんの一部分しか解読することができませんでした。
このような背景のさなかである1990年に、このヒトゲノムのATGCの30億個の並びがどうなっているのかを全部決めようというヒトゲノム計画が開始されました。

しかし、その頃のゲノム記号を解読する技術では、アポロ計画よりも難しい、つまり無理であると批判されていました。

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しかし、13年間ほどの時間をかけて、2003年にヒトゲノム30億の遺伝記号の並びがどのようになっているのかが解読されました。
そのプロジェクトには数千億円の費用を要したと言われております。

2003年にヒトゲノム解読完了宣言を、当時、アメリカのクリントン大統領、イギリスのブレア首相が衛星中継にて行い、非常に大きな成果として捉えておりました。

その後、ATGCの遺伝子記号の解読技術のめざましい発展により、現在では理論的には数時間で読むことができるようになりました。
13年間解読にかかっていたのが、現在は数時間です。
驚くばかりの技術の発展です。

このように、短時間でヒトの遺伝情報がわかるということは、どのようなことを意味するのかというと、ある病気の原因となる遺伝子に傷がついているかどうかを調べることができますし、その傷、異常にあわせた薬の処方などの個人にあった適切な医療を提供することができます。

一番患者さんと接点が多い研究者へ

私達のような実験室にいる研究者(基礎研究者といいます)は、基本的に、患者さんとお話する機会などありません。
一般的には、医者でない限り、患者さんと接することはほとんどないと思います。

しかし、徳島大学に赴任してから、非常にお世話になっている乳がんの臨床の先生のご厚意によって、徳島の乳がん患者さんの集まりの会の「徳島あけぼの会」に参加する機会をいただきました。
今では、その会にて、毎年私達の研究の内容、成果がどこまで行っているかについてお話させていただいております。

今の研究を一刻も早く患者さんの元へ

実際に、患者さんと話してみますと、今どんな薬を飲んでいるか、それによってどんな副作用があるのか、日々不安に思っていることは何かなど本や論文などでは得られないお話をお聞きすることができます。

そうしたお話の中の言葉が、今後の治療薬開発の参考となることもあることがわかりました。
例えば、副作用がヒトによっては耐えられないものもあり、それを中断することで、がんが大きくなってしまうことがあるなどは、これぐらいの副作用は我慢できるものであるとは決してわからないことです。

このことで、今の研究を一刻も早く患者さんの元へ届けなければいけないと、頑張るモチベーションにもなっています。

これからも、患者さんとの関わりを大事にしながら、その気持ちにお答えすべく、研究を進めていきたいと考えています。
よろしければ私たちの研究活動を、ぜひ応援してください。
一緒にがん研究を進めていきましょう!

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