論文報告:筋萎縮と筋力、身体機能、生命予後との関係
筋萎縮ゼロプロジェクトの御支援ありがとうございます。筋萎縮ゼロプロジェクトから新たな研究成果を報告しました。
Upper limb muscle atrophy associated with in-hospital mortality and physical function impairments in mechanically ventilated critically ill adults: A two-center prospective observational study. J Intensive Care 2020, ahead of print
この研究では重症患者さんの筋萎縮がICU退室時の筋力低下や身体機能低下、死亡率と関係している事を報告しました。
64人のICUに入室した患者さんを対象としました。筋萎縮の評価としては超音波を用いて腕と足の筋肉を評価しました。
ICU入室3日目、5日目、7日目の筋萎縮と死亡率の関係を調べると、ICU入室5日目と7日目の筋萎縮の程度が死亡率と関係していることが分かりました。
またICU退室時の筋萎縮の程度が上下肢の筋力低下(MRC score , r = 0.47, p = 0.01)、握力低下(handgrip strength, r = 0.50, p = 0.01)、身体機能低下(FSS-ICU, r = 0.56, p < 0.01)と関係していることが分かりました。
この結果から上肢下肢ともに筋肉の萎縮を避けなければいけないと考えております。
重症な患者さんではICU入室1週間で15%-20%の筋肉が萎縮します。
筋肉の萎縮が患者さんの予後と関係ないのであれば病気の治療に専念すればよいかもしれませんが、そうではなく、筋肉の萎縮自体が患者さんの予後と関係している事が分かりました。
病気の治療と並行して、栄養管理やリハビリテーションなどの取り組みが欠かせません。この研究成果を世界に発信して、1人でも多くの患者さんの筋萎縮予防に繋がれば幸いです。
論文の謝辞に以下のように記載させて頂きました。
「We thank people who supported the muscle atrophy zero project, which aims to prevent muscle atrophy in critically ill patients.」
筋萎縮ゼロプロジェクトでは重症患者さんの社会復帰を目指していきます。今後とも「筋萎縮ゼロプロジェクト」を宜しくお願い致します。
徳島大学 救急集中治療部
中西信人
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