初めまして、私は徳島大学のスポーツ心理学研究室に所属しています、篠原愛実です。
みなさんのお力をお借りして、進めたい研究があります。
私は現在、実力発揮についてスポーツ心理学を通じて学んでいます。
本番で100%以上の実力を発揮することの難しさはみなさん感じるところだと思います。
スポーツにおける実力発揮の課題の1つは動作失調です。
例として、ゴルフにおけるイップス、野球の投球失調、弓道における早気(はやけ)が挙げられます。
今回私は、弓道における実力発揮の課題である早気について研究したいと考えています。
弓道の早気とは何か?
早気になると、会(かい)をもてず矢を離すタイミングをコントロールできません。
「会をもつ」とは、矢を口元で保持することを指します。
通常であれば矢を口元で5秒ほど保持して矢を離しますが、早気になると1秒も矢を保持できなくなります。
これは選手の筋力が問題なのではありません。
例えば男性が、女性でも引くことのできる張力の小さい弓を引いたとしても矢を保持することができません。
早気が実力発揮の妨げになる理由はいくつかあります。
まず早気であると矢を離すタイミングをコントロールできないことが問題です。
例えばなるべく風の影響を受けないようにするため、風が弱いタイミングで矢を離したいと思ってもできません。
さらに早気は進行していく現象でもあります。
特に緊張状態だと進行しやすく、練習では会を5秒もてていた選手が試合では1秒も会をもてなくなることもあります。
早気は進行するとさらに改善させるのが困難になるので厄介です。
また弓道における会は、気力・体力ともに充実した発射の寸前の段階であり、特に武道の側面から考えるとなくてはならないものです。
早気は会をないがしろにする現象でもあるので、弓道選手にとっては改善したいという気持ちが強くあります。
早気はいくつかの課題があることがわかっていただけたと思います。このような早気を経験する弓道選手は決して少なくありません。
大学生、一般社会人の弓道家237人中、早気を経験した選手は79%を占めるという調査結果もあります。
未だに解決方法が確立されていないことが大きな課題の一つです。
弓道の早気をスポーツ心理学の観点から研究したい
早気はイップスに関連しているといわれます。
イップスの原因は未だ解明されていませんが、ジストニアに通ずる神経系の問題と緊張・不安といった心理系の問題が関係しているとされます。
神経系の問題では、同じ動作を繰り返すことによって神経回路が異常に変化し、感覚入力や運動出力に不具合が生じている可能性が示唆されています。
心理系の問題では、微妙な運動調節が必要で緊張・不安が増大する状況下で発症したり悪化したりするとされています。
私は早気の原因を探究するのではなく、早気を改善するためにどのような方法が効果的か、データをとり客観的に理解を深めることを目的として研究をしたいと考えています。
ゴルフのイップスではフォームを変える方法、野球の投球失調では大きさや重量の異なるボールを用いて練習する方法が試行されているようです。
これらは使用する筋肉を変えたり道具を変えたりして、感覚を変化させるという方法です。
私はこのような方法が弓道に応用できないかと考えました。
現在の弓道現場では、射形の変更といった方法が用いられています。
しかし弓道は武道であるため、正しい射形(正射)が決まっています。
道具も自分の筋力や手の大きさに合ったものを継続的に使います。
そのため、他のスポーツに比べて外的な変化の余地の小ささが課題として挙げられます。
そこで私は、神経系や心理系に対する効果が期待でき、かつ弓道でも活用できるということを軸に解決方法を模索しています。
研究室では、ストレッチや筋力トレーニングを行ったり、心理指標を測定したり、自分の発表に対する意見をいただいたりしながら試行を重ねています。
私自身の体験
私も高校のときに弓道をしており、団体で全国大会に出場した経験もあります。
始めた頃は調子がよかったのですが、高校2年の9月あたりから早気に悩まされました。
しかも気がつくと早気になっていました。
早気になると会のコントロールができなくなります。
会をもとうと思っても、もてないのです。
最初の内は早気でも的中確率50%は保てており、そのうち改善するだろうとそこまで重く考えていませんでした。
しかし次第に早気の現象が進行していき、最終的には弓以外のものをもっていても会の動作を行うと手を離してしまったり、人が会の状態にいるのを見るだけで矢を離したくなったりする域にまで達してしまいました。
早気になる以前は練習で70%はコンスタントに的中していましたが、この頃になると40%ほどしか的中しないという日々が続きました。
さらに弓道はスポーツでもあり、武道でもあります。 そのため会をもつ正射に戻さなければならないという思いもあり、いろいろな方法を試す日々が続きました。
巻き藁にもどって会をもつ練習をしたり、的前で会の数を声に出して数えてみたりなど自分で思いついたり友達が成功した方法などを試しました。
授業がある日でも朝早くに学校に行って朝練習を、放課後の練習が終わった後も自主練習をしてなんとか改善させようとしました。
頭では会をもつ自分の姿をイメージすることができます。 しかしいざ引いてみるとやっぱり手が勝手に離れてしまいます。
この繰り返しです。
元々はできていたことであるため、どんどん自信が喪失していきました。
そして最後まで早気を直すことができず、高校3年の総体をもって部活動を終えました。
大学に入学して弓道を続けるかどうか悩みました。 弓道が好きだったからです。
しかしこのまま続けても早気がなおるとは思いませんでした。
そのため1度弓道から離れることに決めました。
もしかしたら、そのまま弓道に戻ることはなかったかもしれません。
研究との出会い
大学2年生になったとき、中塚先生にお会いしました。
先生はスポーツメンタルトレーニング指導士(日本スポーツ心理学会認定)として弓道選手を6年ほどサポートしています。
授業の質問をしに先生の研究室にお伺いしたときです。私が高校時代に早気に困り、大学では弓道を続けていないという話をしました。
すると先生から「早気は同じような練習・体の使い方を続けているとなりやすいみたいだから、やめてしばらく時間が経った今なら何か変わってるかもしれないね」と言われました。
そのあとイップスの本を貸していただいたり、自分でも調べるうちに早気を克服した者の内、「82%が3年以内に直った」という報告をみつけました。
私はもう早気が改善しているかもしれない、もう1度弓を引きたいという思いが湧き起こり、2年ぶりに弓道部に入って一から始めることにしました。
始めてみると、的前で弓を引く時に早気であることは変わりなかったものの、弓以外のものでも会の状態になると離していた私が、ゴム弓であれば的前でも会をもてるようになるまで改善していました。この経験から、感覚が変わることが早気改善の糸口になるかもしれないと考えました。
早気改善の方法を科学的に考え試行錯誤しながら継続的に実践していくことは、容易なことではありません。
高校生の頃の自分にはその余裕がなかったことに気づきました。しかし今なら、科学的知見を通じてあの頃のなりたかった自分になれるかもしれないと思いました。
弓道にはおよそ2000年もの歴史があります。
そのため早気に対していくつか策が講じられてきました。
しかし十分な科学的根拠が示されていないのが現状です。
弓道教本第1巻には、弓道は現代の科学だけでは説明しきれないとしながらも科学的な研究から弓道を理解することも大切だという記述がありました。
そのため徳島大学でスポーツ心理学という立場から弓道について考えてみることは、私にしかできないことではないかという考えに至りました。
また高校時代に、同じく早気で悩んでいた子と「早気をなおす薬があれば絶対飲むのに」と話しあっていたことを思い出しました。
そのため早気について理解を進めることは昔の自分の夢を叶えることにつながると思いました。
このようなことがあり、今回この研究に踏み出すことにしました。
資金の使い道など
クラウドファンディングの目標額は30万円です。
なぜクラウドファンディングという制度を利用させていただくことになったかというと、より多くの方々に知ってもらう機会になると思ったからです。
今回みなさまからいただいた資金は、応援していただいたみなさんに、動作失調(早気)改善のトレーニング効果についてスポーツ心理学を中心とした科学的知見からお伝えするための準備(専門家との研究打ち合わせ及び学会参加、文献収集等)に使わせていただきたいと考えています。
リターンにはお礼のメールや研究結果の成果報告書の送付などを考えています。
研究結果を早気改善の参考にしていただければと思います。
皆様へのお願い
この研究は早気への対処方法を確立する一助となり、より多くの弓道選手の活躍が期待できる社会に貢献できると考えております。
全日本弓道連盟のデータによると、中学の弓道人口は11204人、高校は67011人、大学は13726人、一般は43462人です。 徳島県だけでみると、中学は131人、高校が1080人、大学が367人、一般は237人です。
青年以降の弓道従事者が減少傾向になっていることがわかると思います。
弓道界にとってはもちろんのこと、スポーツ界にとっても大切な人材の損失ともいえます。
その原因としては道具の問題や体の負傷など様々なものが考えられます。
この研究が進めば、少なくとも早気が原因で弓道から離れてしまう選手を食い止めることができるのではないかと思います。
弓道を体験して好きになってくれた人が長期的に弓道と関わっていきたいと思えるような土台を作りたい、少なくとも早気を理由に弓道から離れることがないようにしたいです。
またこの研究は、関連するゴルフのイップスや野球の投球失調、さらにはジストニアにも通じる知見を得られ、よりよい未来に貢献できる可能性があると思います。
なりたい自分に向かって実践する人々に溢れた、イキイキした徳島を夢見ています。そして今回私はスポーツ科学を通じてそんな徳島に貢献したいと考えています。
ご協力よろしくお願いします。
徳島大学への寄付と税制について
- 国立大学法人徳島大学へのご寄付につきましては、個人からの寄付では所得税の所得控除、住民税(徳島県と県内市町村が条例で指定する寄付金として)の所得控除、法人からの寄付では法人税の損金算入が認められます。
寄附金領収書は本プロジェクト終了日である、2021年9月15日の日付けで発行いたします。税制上の優遇措置をお考えの方は対象となる年にご注意ください。
- 個人からのご寄付
徳島大学に寄付金を支出した場合は、所得控除制度が適用され、(総所得金額の40%を上限とした寄付金額)から2,000円を差し引いた額が課税所得から控除されます。
実際の税控除額は前記の控除額に各人の税率を乗じたものになります。
個人住民税については、(寄付金(総所得額の30%が限度)-2,000円)×10%が寄付控除額となります。
10%の内訳は、都道府県が指定した寄付金が4%、市町村が指定した寄付金が6%となっています。
確定申告期間に所轄税務署で確定申告手続きを行う必要があります。その際に、徳島大学が発行する『寄付金領収書』が必要になります。
住民税の控除適用のみを受けようとする方は、『寄付金領収書』を添えてお住まいの市町村へ「都道府県民税・市町村民税控除申告」を行ってください。
- 法人からのご寄付
法人からのご寄付につきましては、寄付金額全額が当該事業年度の損金に算入されます。
この寄付金による損金算入は、徳島大学が発行する『寄付金領収書』で手続きができます。
振込によるご寄附について
このプロジェクトはクレジットカード決済以外に銀行、郵便振込によるご寄附も受け付けています。
入金確認のための支援者様の振込名義などをお知らせいただく必要があります。銀行、郵便振込によるご寄附の場合は必ずご記入をお願いいたします。
≪手順≫
①リターンのコースを選択し、「寄附するボタン」を押してください。
金額を確認し、配送先住所の入力を終えると、振込で支援するかカードで決済するかを選択できます。
表示される画面に従い、次の事項を入力してください。
振込先、口座番号等は申し込みをいただいたのち、支援者様に自動返信メールにて連絡します。
・振込名義人のお名前
・金額
・寄附コースの名称
・領収書などの送付先住所、電話番号、メールアドレス
②ご注意事項
・振込に際しては振込手数料のご負担をお願いいたします。
・カード決済でご利用できるのは、VISA・MASTERのみとなっております。
挑戦者の自己紹介
篠原 愛実
所属:徳島大学総合科学部社会総合科学科
役職:心身健康コーススポーツ心理学研究室
徳島県藍住町生まれ。
藍住南小学校、城ノ内中学校、城ノ内高校を卒業し、現在は徳島大学総合科学部心身健康コースに所属しています。
様々なことを学ぶのが好きで、大学では成績優秀賞などもいただきました。
バレーボール、陸上、弓道、合気道等を経験しました。
私は4姉妹の長女で、小学生の妹がいます。
授業やスポーツ少年団等で元気に活動している妹の姿を見るのが好きです。
妹と過ごしていると、スポーツの根源的な楽しみを再確認させられます。
試して失敗して練習して、を繰り返すことが彼女の成長の秘訣です。
夕食を一緒に食べているとき、「今度は○○を試してみようと思う!」と目を輝かせながら話を聞かせてくれます。
私はそんな妹を尊敬しています。妹にはその姿勢を続けてほしいし、私も妹を見習って行動しようと思っています。
私は、弓道だけでなく動作失調で悩む多くのスポーツ選手が、妹のようにスポーツを楽しみながら活動していけることを願っています。
本研究が悩める方々にとっての解決の糸口になれば幸いです。
・2016年 弓道初段取得
・2016年 全徳島弓道大会(団体女子)準優勝
・2016年 50射選手権大会(中央ブロック女子)3位
・2016年 全国高等学校総合体育大会出場
・2018年 第45回徳島新聞奨学生
・2019年 2018年度教養教育優秀学生賞
・2020年 徳島大学総合科学部優秀学生賞
いながきさん
素敵な卒業研究になりますように!