p53について〜その1
ご支援ありがとうございます。徳島大学の森田明典です。先週12日から本学は一斉休暇でした。
実験動物の維持や論文執筆等で研究室に足を運ぶ時もありましたが、休暇を取り、落ち着いた時間を過ごすと、研究に関することでも日々の生活に関することでも良い着想が出て来ます。
大学教員は、なかなか休みを取りにくい仕事ではありますが、今年度から労働基準法改正に伴い、年5日の年次有給休暇の取得が義務化されました。今後も良い休暇を過ごしたいと思います。
本日は、p53についてご説明いたします。
ヒトのp53の遺伝子名は、がん細胞から単離されたため、TP53; tumor protein p53(がんタンパクp53)と名付けられました。さらに、がん細胞から単離されたTP53遺伝子を、マウスの正常細胞にRASというがん遺伝子と共に導入すると、導入した細胞をがん化(形質転換)させたたことから、当初この遺伝子はがん遺伝子とみなされていました。
このような認識を一変させたのは、正常なヒト細胞から単離された野生型TP53遺伝子の配列が、がん細胞から単離されたTP53遺伝子の配列とわずかに異なること、および、正常ヒト細胞由来のTP53遺伝子をRAS遺伝子と共に正常細胞に導入すると、RASによる形質転換が抑制されることが1984年に発見され、この遺伝子が「がん抑制遺伝子」であることが明らかとなりました。
その後数年の内に、さまざまな種類のヒトがん細胞のTP53遺伝子座位に多くの突然変異が見出されました。下図に示すように、TP53遺伝子は、ヒトがんで最も多くの変異が認められる遺伝子であることが明らかとなっています。
この図が示すように、よく発生するヒトがんのおよそ30〜50%にTP53遺伝子の変異が認められます。もっとも変異頻度の低い子宮頸がんの多くは、p53の機能を抑制する腫瘍ウイルスの1つ、ヒトパピローマウイルス(human pamilloma virus; HPV)の感染が原因となるため、TP53遺伝子に変異がなくとも、感染細胞のp53タンパクは抑制状態にあります。このような状況も含めると、ヒトがんの半数前後でp53が抑制状態にあります。
また、昨年度から個々のがんの遺伝子変異に応じた医療として「がんゲノム医療」が推進されています。がんゲノム医療は、患者のがんや正常組織から細胞を採り、次世代シークエンサーと呼ばれる専用の機械で遺伝情報を読み、個々のがん情報をもとに治療法の中から最適なものを選定する医療です。がん細胞のp53遺伝子型に応じた医療に貢献できる研究として、本研究を推進して参ります。本研究に対するご支援をよろしくお願いいたします。

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