p53制御剤について〜その1

徳島大学の森田明典です。本日は、我々の研究についてご説明いたします。これまでご説明してきましたように、従来開発されてきたラジカルや活性酸素の消去に有効な化合物では正常組織だけを護ることは困難です。

一方で、正常細胞やがん細胞の放射線応答に関する生命科学的知見が集積しつつある現在、細胞の放射線感受性を修飾する有望な候補分子が見つかりつつあります。我々の研究グループが見いだした「p53制御剤」は、細胞の放射線応答の初期段階で活性化する「p53」とよばれる分子を制御します。

詳しくご説明いたします。
「p53制御剤」には、「p53阻害剤」と「p53調節剤」の2つのタイプがあり、最近の研究により、全身被ばくによる骨髄抑制には、「p53阻害剤」、局所被ばくによる腸障害には、「p53調節剤」、が有効であることが明らかとなってきました。

多くのがんでは、p53が変異していたり、ウイルス由来の因子によってp53は不活性化されていたりするため、p53制御剤の放射線防護効果はp53が正常に働いている細胞だけに作用することが特徴です。

「p53阻害剤」は、放射線による急性応答を引き起こすp53の機能を阻害する薬ですからイメージしやすいと思います。

「p53調節剤」につきましては次回詳しくご説明いたします。