論文出版:尿中タイチンを用いた筋萎縮の評価
徳島大学救急集中治療部中西先生の論文がpublishされました。ご支援いただいた皆さまへ中西先生からの論文の報告とお礼が届きました。
筋萎縮ゼロプロジェクトの御支援ありがとうございます。クラウドファンディングで御協力頂いた「尿中物質を用いた筋萎縮の評価」に関する研究成果がCritical Care Medicineから出版されました。
この研究では尿中のタイチンという物質に注目しました。タイチンというのは筋肉がバネのような弾力を持つために機能しているタンパク質です。筋ジストロフィーの患者さんで何十倍にも上昇することが報告されていました。この物質を用いてICUの患者さんの筋萎縮(筋肉の崩壊)を評価できないかと考えました。56人のICUに入室する患者さんを対象とて研究しました。
筋萎縮の評価としては超音波を用いた足の筋肉(大腿直筋)と呼吸の筋肉(横隔膜)を評価しました。また実際の筋力低下との関係をみるため、ICU獲得筋力低下(ICU-AW)を発症しているか評価しました。ICU獲得筋力低下というのはICU入室前に筋力低下がなかったのに重症疾患に罹患したために全身の筋力が低下する状態になったことをいいます。
1施設の研究ではその施設の特性を反映している可能性があるため、徳島大学のみでなく、徳島県立中央病院のICUにも協力して頂きました。手術の影響で筋肉を切る患者さんは当然タイチンの値が高くなりますので今回の研究対象とはしておりません。まず初めにICUの患者さんでタイチンの値が健常な方の10~30倍程度に増加していることが分かりました。普通は健常な方ではタイチンが尿中にほとんど放出されません。つまり重症な患者さんでは急激な筋肉の崩壊が起こっていることが分かりました。
次に、ICU入室3日目、5日目、7日目の足の筋肉(大腿直筋)の萎縮と尿中タイチンの値が有意に関係していることが分かりました(p ≤ 0.03)。一方、呼吸の筋肉(横隔膜)の変化とは有意に関係していませんでした(p = 0.31–0.45)。これは体全体を占める筋肉の量が影響しています。人間の筋肉は横隔膜より足の筋肉の方が圧倒的に多いです。また呼吸の筋肉の萎縮は人工呼吸器の設定などに影響されるため他の筋肉とは異なります。そのため、全身の筋肉を反映しているともいわれる足の筋肉と尿中のタイチンが関係していたと考えられます。
そしてこのタイチンは筋肉の萎縮のみでなくICU獲得筋力低下とも関係していました(p = 0.01)。ICU入室2日目のタイチンの値でICU獲得筋力低下になるかどうかも予測できることが分かりました(感度:78%、特異度:81%)。さらに驚いたことに、このタイチンが高いほどICUでの死亡する可能性が高いことも分かりました。
今回の研究成果を重症患者さんの筋萎縮モニタリングに応用していきたいと考えております。超音波を用いた筋萎縮の評価は技術や設備で限定されるために誰でも行うことができません。しかし尿の測定は誰でも行うことができます。
採血では患者さんに貧血などの影響があります。筋萎縮の評価を行うために貧血になっていたのでは何のために医療をしているのか分かりません。さらに採血では痛みが伴います。しかし、尿であれば本来は破棄するものであるため、患者さんの負担が全くありません。腎臓が悪い方でもタイチンを尿中のクレアチニンで補正するため、腎臓の機能の影響なく測定できることも分かっております。
今回の結果を、筋萎縮で苦しんでいる世界中の患者さんの治療に繋げていきたいと考えております。今回は皆様のおかげで尿中タイチン測定キットをたくさん購入することができました。論文の謝辞にこのプロジェクトの事を記載いたしました。
「We thank people who supported the muscle atrophy zero project, which aims to prevent muscle atrophy in critically ill patients.」
筋萎縮ゼロプロジェクトでは重症患者さんの社会復帰を目指していきます。まだまだこれからです。最後まで諦めません。今後とも「筋萎縮ゼロプロジェクト」を宜しくお願い致します。
徳島大学 救急集中治療部
中西信人
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