がんと聞くと「とてもこわい病気」というイメージをもっている人が、多いかもしれません。
がんで死に至る場合があるから
がんの治療や療養には、家族や親しい人に負担をかける場合があるから
がんや治療で、痛みなどの症状が出る場合があるから
実は、日本人の2人に1人が、一生のうちにがんになるといわれています。
がんは、私達にとってとても身近な病気です。
更に、2020年の最新データーではがん全体の5年生存率は66.4%と年々改善に向かっています。
がんの研究は、どんどん進んでいて、多くのことがわかってきています。
もし、がんになっても、早く見つけて、適切な治療をすることで、普段の生活に戻れる人がたくさんいます。
私たちは、がん医療を支える三大がん治療法(手術療法、薬物療法、放射線療法)のひとつである放射線療法の研究を行っています。
より効果的な放射線治療を実現させるために、副作用となる正常組織での障害を抑えることができる放射線防護剤の開発を目指しています。
※放射線防護剤
大量の放射線を受けてもその障害をできるだけ抑えようという目的で開発された薬のこと。
放射線でがんが治せるの?
放射線には細胞に傷を与える効果があります。その効果によりがん細胞は増えるのが止まり、やがて死んでいきます。
単純にがんへ向かって放射線をたくさんあてれば、完全にがんを死滅させることもできます。
現在、放射線治療ではがん組織にだけ放射線をあてることはできず、がんの周囲にある正常な組織にも放射線があたるという弱点があります。
がん細胞と同じように、正常な細胞でも放射線の影響を受けます。
ただ、多くの正常細胞はがん細胞より回復力が強いので、元どおりに回復することができます。
しかし、食道がんに対する放射線治療後の患者さんのうち、20%以上に何らかの心臓の合併症がでてくることがあります。
他にも治療部位にもよりますが、副作用として皮膚が火傷のようにただれたり、血が混じった下痢を起こしたりと、正常な組織に障害が生じることがあります。
なかには失明や唾液分泌障害など、治療後の生活の質を著しく低下させる障害が起こることを覚悟して治療をうける患者さんもいます。
放射線治療ではこれらの正常組織に障害が生じないようにするため、正常組織が耐えられる放射線量までしか照射しないようにされています。
すなわち、放射線は患者さんに向かって照射できるおおよその限界量のようなものがあります。
限界量の放射線量でも正常組織障害が発生する確率はゼロではありません。
現在の医療ではこの限界量があるために、がんを完全に治せる手前で放射線があてられなくなってしまう状況が起こることもあります。
研究の始まり、きっかけ
はじめまして、徳島大学大学院医歯薬学研究部・医用理工学分野の森田明典です。
私がこの研究に取り組むきっかけは、「ヒトはなぜ放射線に弱いのか?」という根源的な問いに答えようとしたことが始まりになります。
私たちが放射線に抱く恐怖心の根幹には、放射線の致死的な効果にあらがう方法が見つかっていないことにあると考えました。
大学院生だった頃からずっと放射線細胞死の仕組みの研究に取り組み、その仕組みをコントロールする方法を探してきました。
この取り組みの中で発見したのが、p53およびp53を制御する一連の化合物になります。p53は、正常細胞の放射線感受性を変えるための標的として最適な分子の一つです。
※p53
DNAが修復不可能な損傷を受けた場合に、細胞の自殺であるアポトーシスを誘導するなど,多彩な生理機能を持つ。正常細胞とは異なり,多くのがん細胞ではp53遺伝子に変異や発現抑制などの異常が有る。
放射線防護剤、p53ってなに?
放射線防護剤は、組織の放射線に対する抵抗力を高めることができる薬です。
患者さんに放射線防護剤を投与すれば、正常組織を護りながら放射線治療を行うことができ、副作用となる正常組織障害の発生を抑えることができます。
ただし、投与する防護剤が、がん組織の放射線に対する抵抗力まで一緒に高めてしまっては意味がありません。正常組織にだけうまく作用できる性質をもった防護剤であることが重要です。
私たちが開発している防護剤の一番の魅力は、正常組織は護るが、がん組織は護らないという、まさに放射線治療において求められる理想的な特徴を備えていることです。
これを可能にさせるために私たちが注目しているのが、細胞に含まれるp53というがん抑制因子です。
正常な組織とは異なり、多くのがんは異常なp53をもっていることがわかっています。
したがって、正常なp53をもった細胞だけを護る防護剤を使えば、正常な組織だけを放射線から護ることが可能になります。
このように、正常なp53をもつ正常組織にだけ作用して放射線に対する抵抗力を高める防護剤を「p53制御剤」と名付け、日々研究を進めています。
p53制御剤の可能性!!
医療技術の進歩により、がん治療実施後の生存率は年々増加しています。
このような状況を考えると、単にがんを治療するだけでなく、治療後の生活の質を悪化させるような副作用を起こさない放射線療法を実現させることが今後一層求められます。
正常組織だけを放射線から護るというユニークな特徴をもつp53制御剤は、まさにこのニーズに応える医療技術といえます。
この技術は、正常組織にだけ放射線に対する強い抵抗力を与えることができます。
そのために、正常組織は障害の発生を回避でき、今までの使用してきた放射線の限界を超えた量を患者さんにあてることができます。
これによって、より確実にがんを死滅させることができ、治療効果を大きく高めることも期待できます。
更に、抗がん剤を使った薬物療法も放射線療法、手術療法と並ぶ三大がん治療法のひとつで、頻繁に行われています。
抗がん剤もがん細胞と正常細胞の双方に傷をつけるため、脱毛や腎不全などの正常組織障害が副作用として生じる場合があります。
現在使われている抗がん剤には、放射線と同様の原理で細胞を死滅させるものが多いことから、p53制御剤は放射線療法だけでなく、抗がん剤治療における正常組織防護剤としても利用できる可能性も明らかになっています。
このように、p53制御剤は現代のがん医療を飛躍させ、更なる健康長寿社会を実現させる技術になると私たちは考えています。
課題・難しいこと
私たちの研究室では有望なp53制御剤候補化合物が、近年少しずつですが新たに見つかっています。
しかし、それらの化合物がどのような生体内変化を引き起こして防護効果を発揮しているのか、多くのブラックボックスが存在します。
私たちは、p53制御剤の臨床応用のためにこのブラックボックスの中身、すなわち作用メカニズムの詳細を明らかにしようとしています。
1つの方法として、候補化合物を投与した後に放射線を照射するというがん治療を模した動物実験を用います。
これにより、p53を制御することで正常組織の障害を軽減してがんを治療する、新しい放射線療法の有効性を実証していきます。
更に、p53制御剤の効き目だけでなく、副作用がないかなどの安全性も調べる必要があります。
このように、創薬研究には多くの労力と時間、そして研究資金を確保しなければなりません。
私たちができること:基礎研究から創薬へ
私の研究室は、徳島大学医学部保健学科医用理工学分野に所属しています。
この分野では、高度化、専門化する医療を支え、保健・医療・福祉において多様化するニーズに対応できる有能な医療人を養成しています。将来、医療系の様々な分野で活躍したい学生さんが集まっています。
この研究は、志の高い学生とスタッフで一丸となって進めています。
スタッフの一人の西山助教は、
『放射線を使った日本の医療技術は世界トップクラスであり、非常に質の高い放射線画像診断・放射線治療が提供されています。
その反面、これらの医療放射線による被ばく量も世界トップクラスです。放射線は今の医療において絶対に欠かすことができないものです。
それだけに、正常細胞へのダメージという医療放射線のデメリットを克服できるp53制御剤は、我が国の放射線医療水準をさらに高める起爆剤になり得ます。
この技術によって、より高度で副作用のない放射線医療が提供されることを目指しています。』という思いで研究に取り組んでいます。
研究に取り組む西山助教
現在、継続的ながん医療を受けている日本の患者数は、約150万人に上り、その内の約3割が放射線治療、約8割が化学療法を受けています。
これらの治療における副作用は軽微なものも含めると発生率は高く、臨床的に深刻な正常組織に障害が発生しない投与線量や投与量として処方するため、がんが根治することができない状況が時には生じます。
そのため、これらのがん治療における副作用を軽減させる正常組織防護剤の開発が望まれています。
そのために、私たちには出来ることがあります。
私たちが現在研究している防護剤「p53制御剤」はがん治療で正常な組織を護り、
がん組織だけを死滅させる薬になりうるのです。
この「p53制御剤」を薬として患者さんに届けるために研究を推進していきたいと考えています。
支援して欲しいこと
化合物の効果や作用メカニズムを詳しく調べるためには、多くの実験試薬や高額な実験装置を使用できるほどの研究資金がどうしても必要です。
私たちの研究室では教員のみならず、学生自身にも研究資金の獲得にチャレンジしてもらいながら、なんとか研究室の運営費をまかなっています。
しかし、研究が軌道に乗りだした近年になって、それまで長年大切に使ってきた高額な実験装置等が相次いで故障しはじめ、せっかく苦労して集めた研究資金をその修理費に充てるなど、研究を思うように進めることができていません。
そのようなときに限って新たに有力な化合物が次々と見つかっており、化合物ひとつあたりの研究に費やせる資金が不足しています。
クラウドファンディングで得られた援助は、p53制御剤開発の研究遂行に必要な諸経費(実験試薬費、動物実験費、実験機器使用料等)として使用させていただきます。
支援のお願い
いまや日本国民の半数が将来的にがんを患い、国民の3人に1人ががんを原因として死亡するとされます。
つまり、実に多くの国民が放射線治療、抗がん剤治療による副作用を経験することになります。
がん治療においては、治療期間中、治療後のいずれにおいても苦痛を伴う副作用が発生するリスクがあります。
p53制御剤にはこの副作用を伴わない、より強力ながん治療法を実現させる可能性を秘めていると私たちは信じています。
この考えにご賛同いただける方のご協力を心よりお願い申し上げます。
プロジェクト応援者
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東京理科大学薬学部生命創薬科学科
教授 青木 伸
放射線によるがん治療の需要が、どんどん高まっています。化学療法で使用する抗がん剤による治療が接近戦であるのに対し、放射線治療は「飛び道具」による遠方射撃であり、抗がん剤による治療が困難ながんの治療に有効です。「放射線防護剤」は放射線治療の副作用を抑制して安全性を高めるために重要です。また、森田博士は信頼できる研究者です。皆様の暖かいご支援をお願いいたします。
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国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
量子医学・医療部門 放射線医学総合研究所
グループリーダー 王 冰
癌放射線療法は高い治療効果が得られる一方、正常組織障害が処方線量の限界を決め、生活の質の低下も引き起こします。治療効果を向上させる為には、正常組織を選択的に防護する放射線防護剤の研究開発が肝心です。このプロジェクトはp53を始めとする細胞死制御分子の活性を調節することで、正常組織を選択的に防護する放射線防護剤を開発する重要な研究です。皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
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徳島大学への寄付と税制について
- 国立大学法人徳島大学へのご寄付につきましては、個人からの寄付では所得税の所得控除、住民税(徳島県と県内市町村が条例で指定する寄付金として)の所得控除、法人からの寄付では法人税の損金算入が認められます。
寄附金領収書は本プロジェクト終了日である、2020年05月29日の日付けで発行いたします。税制上の優遇措置をお考えの方は対象となる年にご注意ください。
- 個人からのご寄付
徳島大学に寄付金を支出した場合は、所得控除制度が適用され、(総所得金額の40%を上限とした寄付金額)から2,000円を差し引いた額が課税所得から控除されます。
実際の税控除額は前記の控除額に各人の税率を乗じたものになります。
個人住民税については、(寄付金(総所得額の30%が限度)-2,000円)×10%が寄付控除額となります。
10%の内訳は、都道府県が指定した寄付金が4%、市町村が指定した寄付金が6%となっています。
確定申告期間に所轄税務署で確定申告手続きを行う必要があります。その際に、徳島大学が発行する『寄付金領収書』が必要になります。
住民税の控除適用のみを受けようとする方は、『寄付金領収書』を添えてお住まいの市町村へ「都道府県民税・市町村民税控除申告」を行ってください。
- 法人からのご寄付
法人からのご寄付につきましては、寄付金額全額が当該事業年度の損金に算入されます。
この寄付金による損金算入は、徳島大学が発行する『寄付金領収書』で手続きができます。
振込によるご寄附について
このプロジェクトはクレジットカード決済以外に銀行、郵便振込によるご寄附も受け付けています。
入金確認のための支援者様の振込名義などをお知らせいただく必要があります。銀行、郵便振込によるご寄附の場合は必ずご記入をお願いいたします。
≪手順≫
①リターンのコースを選択し、「寄附するボタン」を押してください。
金額を確認し、配送先住所の入力を終えると、振込で支援するかカードで決済するかを選択できます。
表示される画面に従い、次の事項を入力してください。
振込先、口座番号等は申し込みをいただいたのち、支援者様に自動返信メールにて連絡します。
・振込名義人のお名前
・金額
・寄附コースの名称
・領収書などの送付先住所、電話番号、メールアドレス
②ご注意事項
・振込に際しては振込手数料のご負担をお願いいたします。
・カード決済でご利用できるのは、VISA・MASTERのみとなっております。
挑戦者の自己紹介
森田 明典
所属:徳島大学大学院医歯薬学研究部・医用理工学分野
役職:教授
私の父方の家系は、祖父、祖母、父のいずれもがんで亡くなっており、がん治療の実際を、肉親を通してこの目で見てきたことが研究動機の一つになっています。基礎研究ではありますが、放射線細胞死を制御するための方法が少しずつ見通せる段階にあり、将来の波及効果を期待して一歩一歩着実に研究活動を進めています。がん治療に伴う苦痛を少しでも減らしたいとの思いは、時には苦労も多い基礎研究に取り組む支えとなっています。
吉成崇さん
放射線治療も辛いと聞きます。僅かで恐縮です。