皆さん、歴史資料という言葉から何を連想されますか?
正倉院や博物館に保存されている国宝級の資料群でしょうか?
これらも確かに大変重要な歴史資料です。
でも、実は歴史資料は私たちの日常生活の中にあふれているのです。
日記や手紙などの文献資料や絵画、農具や工具などの道具類、私たちが暮らしている家をはじめとした建築物も歴史資料なのです。
変化が激しくリニューアルのサイクルが短くなっている現代、意識しなければ貴重な資料はどんどん失われていきます。
文化庁もこのような歴史資料や文化財の保存と活用を進めることを重視しています。
どうしてなのでしょうか?
それは、歴史資料は過去と未来をつなぐ架け橋になるからです。
現代社会の課題を解決する際には過去の社会がどのように作られてきたのかを、正しく知り、理解し、現代社会が抱える課題の原因を突き止めることが重要です。
その意味では現代社会に散在する数多くの資料を未来に継承することが大変重要なことと言えるのです。
歴史資料の継承とは?
さて、このような歴史資料はこれまでどのようにして継承されてきたのでしょうか?
例えば、日本神話が記述されている書物として有名な『古事記』は、現在書籍として多く刊行され、内容を知ることができます。『マンガ古事記』というような本もありますね。
でも、『古事記』の原本(『古事記』が編纂された時に作成された元の本)は、現在はありません。
では、どうして私たちはその内容を知ることができるのでしょうか?
それは、「写本」が作成されてきたからです。「写本」は文字通り本を書き写しているものです。
現代人ならスマホで ”パシャリ” と撮影したり、コピー機でコピーを取ったりできますが、このような機械がなかった時代には、内容をそのまま手書きで書き写しました。
書き写す個人がその内容を知りたいと思い、また何度も読みたいと思って書き写したことが多かったでしょう。
このような写本を作るという事が繰り返され、その中のいくつかが現在にも継承されて、私たちは『古事記』をはじめとした過去の資料の内容を知ることが可能となっています。
ただ、写本は書き写す際に書き間違いがおきることもあって、いくつも残っている写本の場合には、内容が少しずつ異なってくることがあります。
このような内容の違いをよく研究して、可能な限り原本の内容は確定されていくのです。
ですから、資料を未来に繋ぐためには、資料そのもの(原本)を保存し、継承することが一番大切なことと言えます。
でも、資料は、どうしても劣化します。古くなると壊れやすくなるということです。
ですから、劣化する資料のデータを別の形で保存し、継承できれば素晴らしいことと言えます。
古文書などの過去の資料をデジタル化し、保存・活用する取り組みは、デジタルアーカイブと言われ、近年急速に進み、その成果は、インターネットを介して多くの資料館や研究機関のホームページで見ることができるようになってきました。
このようなデジタルアーカイブを通して、私たちは遠くの資料館に実際に行かなくても、資料の内容を知ることができるようになりました。
歴史資料のデジタル化公開
実は徳島大学附属図書館でもデジタル化した資料の公開が行われています。
江戸時代に徳島の藩主であった蜂須賀家が所蔵していた古地図のコレクションはとても貴重な資料です。
また、蜂須賀家が家臣に命じて提出させた、「成立書幷系図」の一部は、家臣の家の系譜や系図が書かれている資料で、本学附属図書館が所蔵しています。
この資料も「蜂須賀家家臣団家譜資料データベース」として、公開されています。
現在と同様に同姓の家も多くありますし、260年も続いた江戸時代ですから、長く続いた家には、姓だけでは個人に中々たどり着けないデータでもありました。
知りたい個人のデータに早くアクセスできるようにするために、このデータベースでは、膨大な数の家譜資料の中から個人名での検索が可能となるように、個人名の抽出を行い、検索できるようにしました。
また同時に、附属図書館で保管する際に行われた製本の過程で起きた混同も、修正して表示できるようにしました。
蜂須賀家の家臣であった方の御子孫は全国にお住まいですが、時々このデータベースを利用して御先祖様のことを調べておられる方からの問い合わせを受けています。
デジタルアーカイブでどんなことができる?
全世界のどこにいても、インターネットにつなぐことの出来る環境さえあれば、内容を見ることが出来るからこそ実現できることだと言えます。
このように、過去の資料を保存し、未来に継承することは大変重要です。
しかし、同時に、現在の「日常」を映し出す資料を継承することも重要です。
戦後、一般市民の間にフィルムカメラが普及し、数多くの写真や動画フィルム等の映像が撮られました。
これらの全ては、私たちの「日常」を未来に伝える貴重な「歴史資料」です。
個人で保管されていることが多く、現在急激に失われつつある資料群でもあります。
写真や動画資料は、個人が撮影した個人的な資料もあれば、マスメディアが作成した公的な資料もあります。
公的な資料は、積極的に保存が進められています。
でも、個人的な資料はマスメディアの保存対象にはなっていません。
しかし、これら個人的な資料群は、私たち一人一人が生きた証とも言える貴重な資料群です。
そして、写真や動画などの資料には、その資料が撮影された状況を含め、個人の記憶が含まれています。
このような貴重な資料が失われてしまう原因には様々な背景があります。
毎年のように起きる大災害等による被災、水害で水没したり、津波で流されてしまうことも多くあります。
また、過疎化によって空き家が増加し、保存されていた資料の内容や価値を確認できないままに処分されてしまうこともあります。
終活や断捨離という言葉が身近になり進んでいる資料の廃棄も原因の一つとも言えます。
ただ、歴史資料として資料を保存していくことが重要だとは言え、全ての「モノ」を残していくことは不可能です。
記憶を未来に繋ぐアーカイブ
私たちは、これら失われてしまう可能性のある貴重な資料をデジタル化し、資料の背後にある市民の記憶を紡ぎ、インターネットを通して公開し、共有できるシステムを構築したいと考えました。
フィルムの写真やビデオテープの動画をデジタル化して保存するだけでなく、写真やビデオが撮影されていた時期のことを記憶されている方のインタビューも、デジタル化した資料と共に継承できるようにしたいと考えたのです。
私たちは、写真等の資料をWEB上のデジタル地図に重ね合わせて公開しようと考えています。さらに、写真にまつわる人々の記憶も表示できるようにしようとしています。
そうすれば、デジタル化した写真の画像を多くの人が共有できます。
自分自身が撮影した写真ではなくても、懐かしい風景などを目にすることで、その地域に暮らした多くの人の記憶がよみがえってくるはずです。
私たちの取り組みは、このような形で、個人の写真資料を地域に還元していく取り組みでもあります。
私たちの目指すデジタルアーカイブを通して、個人の記憶が有機的なつながりを持って、未来に繋がっていくことになるはずです。
このように私たちが目指すデジタルアーカイブの仕組みを構築することは、個人的な資料を単に、未来に繋ぐだけではありません。
私たち一人一人の記憶を未来に繋ぐ取り組みでもあります。
アーカイブの対象とする資料は、これまで資料館や図書館などの公的機関が保存してきた資料に加えて、一般市民が撮りためた膨大な写真資料なども対象として収集したいと考えています。
このような資料の収集とデジタル化を迅速に進めるには、やはり費用がかかります。そのために皆様のご支援を頂きたいと思います。
デジタル地図上で資料を利用できるようにすれば、近年急速に公開が進んでいる防災や観光などのデジタル地図とこれらのデータを重ね合わせることが可能になります。
開発が進んで地形が変わってしまった町の景観を、古写真で復活させることは、防災にも役立つはずです。
外国の方々は、地域の歴史や文化に興味を持って下さいます。古い写真のデータを観光地図と重ねれば、昔の風景や景観を味わいながら、観光を楽しむことにも繋がります。
昔の景観を見ることで高齢者の方は自分たちの若い頃を懐かしみ、楽しい気分になりますし、介護施設などで昔を知らない若い介護者との会話のきっかけにもなるでしょう。
このように、活用の範囲は無限に広がっていくのです。
デジタルアーカイブチームで進めてきたこと
徳島大学常三島キャンパスのアーカイブを作成
私たちは、手始めに、徳島大学総合科学部の同窓会である渭水会が所蔵している写真をデジタル化し、写真にまつわる記憶をインタビューして記録し、GIS(Geographic Information Systems;地理情報システム)の技術でデジタル地図上に表示できるようにしました。
さらに、モノクロ写真をカラー化することも行っています。今は、徳島大学常三島地区の写真を対象にシステムを構築しています。このアーカイブを通して、古写真にまつわる思い出話を楽しむこともできます。
デジタルアーカイブの可能性
現在は常三島キャンパスを中心にしたデジタルアーカイブですが、今後は、徳島県立文書館や徳島県立博物館等との連携を進め、徳島県のデジタルアーカイブを作成しようと目指しています。
私たちの活動は、文化の保存・継承・発展 の基礎になり、保存されたコンテンツの二次的な利用や国内外に発信する基盤となります。
誰もが時間や場所に制約されることなく、様々な歴史資料の情報とコンテンツにアクセスすることが実現できれば、この情報を元に新しい活用を創出できます。
デジタルアーカイブの活用範囲は、観光、教育、学術、防災など無限に広がっていきます。資料をデジタル化すること、デジタル地図を利用して発信することで、活用の可能性が広がっていくのです。
こうした活用を通じて、デジタルアーカイブの構築・共有と活用の循環が持続的なものとなれば、その価値は多くの市民や国民のものとなり、「研究から社会へ」のサイクルを回し続けることが可能となります。
数多くの市民が保有する個人の貴重な資料を未来に継承し、利用を進めるための一助となるような利用しやすいシステムを構築することが、私たちの目標です。
このプロジェクトへの支援を募りたく、クラウドファンディングに挑戦します。
このプロジェクトは数多くの市民が保有する個人の貴重な資料を未来に継承し、幅広い活用を進めるための一助になると考えられます。
クラウドファンディングで支援して欲しいこと
できる限り多くの市民から写真などの提供を希望しており、提供された写真などを迅速にデジタル化(さらにはカラー化)してデジタルアーカイブのコンテンツとして蓄積・公開する一連のシステムを構築するための支援をお願いいたします。
クラウドファンディングに挑戦する理由
公的機関が保存してきた資料と一般市民が撮りためた膨大な写真資料、つまり地域に散在する地域情報を集約しデジタル地図上に公開していきます。
可能な限りその写真の思い出もともに楽しめるようなコンテンツの構築を行っています。
しかし、現状は、散発的に資料を収集しながら、適時デジタル化作業をしています。
これらを効率的に進めていくために、ソフトとハードの両側面の充実が必要になります。
このことは、数多くの市民が保有する個人の貴重な資料を未来に継承し、利用を進めるための一助になると考えられます。
研究と社会実装のサイクルを継続的に回していくことは、デジタルアーカイブの活用対象である、観光、教育、学術、防災など多様な利用が可能となると考えられます。
この価値を国民(市民)のものとして、現代社会に還元するために、このプロジェクトを実行していく必要性のためにご支援をお願いいたします。
徳島大学への寄付と税制について
- 国立大学法人徳島大学へのご寄付につきましては、個人からの寄付では所得税の所得控除、住民税(徳島県と県内市町村が条例で指定する寄付金として)の所得控除、法人からの寄付では法人税の損金算入が認められます。
寄附金領収書は本プロジェクト終了日である、2020年01月31日の日付けで発行いたします。税制上の優遇措置をお考えの方は対象となる年にご注意ください。
- 個人からのご寄付
徳島大学に寄付金を支出した場合は、所得控除制度が適用され、(総所得金額の40%を上限とした寄付金額)から2,000円を差し引いた額が課税所得から控除されます。
実際の税控除額は前記の控除額に各人の税率を乗じたものになります。
個人住民税については、(寄付金(総所得額の30%が限度)-2,000円)×10%が寄付控除額となります。
10%の内訳は、都道府県が指定した寄付金が4%、市町村が指定した寄付金が6%となっています。
確定申告期間に所轄税務署で確定申告手続きを行う必要があります。その際に、徳島大学が発行する『寄付金領収書』が必要になります。
住民税の控除適用のみを受けようとする方は、『寄付金領収書』を添えてお住まいの市町村へ「都道府県民税・市町村民税控除申告」を行ってください。
- 法人からのご寄付
法人からのご寄付につきましては、寄付金額全額が当該事業年度の損金に算入されます。
この寄付金による損金算入は、徳島大学が発行する『寄付金領収書』で手続きができます。
振込によるご寄附について
このプロジェクトはクレジットカード決済以外に銀行、郵便振込によるご寄附も受け付けています。
入金確認のための支援者様の振込名義などをお知らせいただく必要があります。銀行、郵便振込によるご寄附の場合は必ずご記入をお願いいたします。
≪手順≫
①リターンのコースを選択し、「寄附するボタン」を押してください。
金額を確認し、配送先住所の入力を終えると、振込で支援するかカードで決済するかを選択できます。
表示される画面に従い、次の事項を入力してください。
振込先、口座番号等は申し込みをいただいたのち、支援者様に自動返信メールにて連絡します。
・振込名義人のお名前
・金額
・寄附コースの名称
・領収書などの送付先住所、電話番号、メールアドレス
②ご注意事項
・振込に際しては振込手数料のご負担をお願いいたします。
・カード決済でご利用できるのは、VISA・MASTERのみとなっております。
クラウドファンディング挑戦者
桑原恵 |
徳島大学大学院社会産業理工学研究部社会総合科学域 教授
日本近世史を研究しています。古文書を読むのが大好きで大学の公開講座でも古文書を読む講座を担当しています。鳴門の山西家が建立した寺院(仙龍寺)を廃寺とする際に救出した天井画は、今でも総合科学部が保管しています。災害で被災した古文書などの資料を救出する「歴史資料保存ネットワーク徳島」の一員でもあります。
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佐原理 |
徳島大学大学院社会産業理工学研究部社会総合科学域 准教授
映像をどのように地域に還元していくか、映像・デザインの視点から取り組んでいます。個人的に記録された映像も地域の貴重 な資料として見返してみると、個人やその家族が見返す写真の意味とは違った価値を見出すことができます。写真は当時の記憶 を呼び起こし、匂いや温度まで感じさせることもあります。特に戦中や戦後の白黒写真を修復したり、色彩を復元するとそうし た触覚的な記憶が蘇ってくるようです。私自身も祖父の写真の色彩を復元した際には、自分と同い年の祖父が目の前にいるように感じタイムマシンで過去に戻ったかのようでした。写真はまさに命や存在そのものを記録している貴重な資料だと思います。 こうした写真を通して地域をみつめる活動を"Film Cycle Project"として展開しています。
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塚本章宏 |
徳島大学大学院社会産業理工学研究部社会総合科学域 准教授
GISを使って地域の課題を可視化・分析することに取り組んでいます。歴史資料にも、位置や場所の情報が多く含まれています。それらをデジタルマップ上で、一般に公開するだけでなく、失われかねない資料を収集できるシステムとして構築したいと考えています。これまで古地図と現在地図を切り替えながら、GPSと連動して町を歩くことができるアプリの作成などに関わってきました。(「鳥取こちずぶらり」「三原地図さんぽ」「城下町とくしま歴史 さんぽ」)
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挑戦者の自己紹介
デジタルアーカイブチーム
所属:徳島大学大学院社会産業理工学研究部
ooo
tkpmnetさん
頑張ってください!!