例えばあなたが脳梗塞などの病気にかかったとしたら。
その結果、声を出すことができず、体も思うように動かすことができない状態になる可能性があります。
そうなると、医師とのコミュニケーションがうまく取れず、リハビリテーションもうまく行えないかもしれません。
また、身近な家族などとも、どんなに会話がしたいと思っても、意思の疎通は簡単にはできないでしょう。
このことは、障がいを持つ本人のみならず、周りの家族なども、辛い思いをすることになります。
私は、大学生時代、学生寮での団体生活、アルバイトを中心とし、学業をそっちのけで社会勉強に勤しんでいました。
そんなとき、大学4年生の時に出会った赤松教授の授業に感化されて脳の活動の計測および分析に関する研究をするに至りました。
赤松先生が授業でおっしゃっていたことの中で、以下の言葉が非常に印象に残っています。
「脳の活動を計測することで、ヒトの心理状態を把握することが可能である」
もし、脳梗塞などで意思表示ができなくなった人へ問いかけた時に、コンピュータが、システムが、その答えを代わりに答えてくれていたら。
そうしたら、意思表示ができない本人も、その家族も、治療に関わる全ての人とコミュニケーションを取ることができます。
その結果、本人も家族も安心して治療に臨むことができます。
また、リハビリテーションもうまく機能し、より早く、より効率的に、本人が納得しながら回復に向かうことができると考えます。
それを実現するために、私は今、脳の血流や脳波の変化などを計測し、人工知能の技術を用いて情報の抽出、解析を行う研究を行なっています。
そうすることで、ヒトの欲求・yes,noなどの意思といった心理状態を、コンピュータが把握するシステムを開発することにつなげたいと考えています。
研究の主旨にご賛同いただける方、ぜひご助力をお願いいたします。
研究概要
なぜ脳波でヒトの意思が読み取れるのか?
頭皮状の電気を読み取って解析
ヒトの意思の中で一部のものは、脳内で、特定の「神経伝達物質」をやりとりすることがわかっています。
この神経伝達物質がやりとりされるということは、イオンが動くということ。
イオンが動くということは、電子が動くということ。
電子が動くということは、電気が発生するということです。
この電気が、脳波と呼ばれるものです。
その頭皮上に届く脳波を、下図①の頭に装着する機械で読み取ります。
読み取ったものを分析することで、ヒトが今どういう意思を持っているかがわかる可能性があります。
図①:脳波を読み取る装置である「ヘッドセット」。
ひと昔前の計測器は、取り外しが不便で痛みもあったが、
最近のものは改良されて簡単に取り外しできて不快感も少ない。
なぜ脳の血流でヒトの意思が読み取れるのか?
近赤外線をどれだけ吸収したかを解析
ヒトの意思が現れるとき、神経伝達物質がやりとりされますが、そのときは酸素をたくさん消費します。
酸素は血液中のヘモグロビンというタンパク質が運搬しますが、酸素を持ってくるときは、酸化ヘモグロビン、渡した後は、脱酸化ヘモグロビンという物質になっています。
このとき、これらのヘモグロビンに近赤外線を当てるとどうなるか。
酸化ヘモグロビンと脱酸化ヘモグロビンは近赤外線を吸収しますが、それぞれその吸収率が異なります。
この性質を利用し、頭に装着したヘッドセットから近赤外線を照射し、反射してくる光の量をセンサーでキャッチします。
これを分析することで、酸化ヘモグロビンと脱酸化ヘモグロビンの量を測定することができ、またそれを解析することで、ヒトの意思が読み取れるという仕組みです。
ヘッドセットは、耳の裏に取り付けるところを起点として、各センサーが、
脳のしわの深いところに配置されるように計算された構造になっている。
研究の難しいところ
脳の活動のわかっていないところが研究の対象ということもあり、研究は発見の連続であるということが面白いポイントだとも言えます。
しかしながら、わかっていない部分が非常に多いため、分析における正しい答えの発見や、分析するための技術の確立などの、基本的な研究が必要です。
具体的に言うと、ヒトの脳の活動は個人差があります。
個人差の中でも、ヒトの違いの差である「個体間差」と、昨日の自分と今日の自分との差である「個体内差」があります。
その違いの影響を受けてしまう「ヒトのココロ」などの脳の活動と、ほとんど影響のない「体を動かす指令を出す」などの脳の活動があることまではわかっています。
こうした状況において、ヒトの意思を検出できる技術を確立していくことは、簡単なことではありません。
音楽療法にも応用できる!
また、こういったシステムの研究は、うつ病などの精神疾患に効果があると言われている音楽療法の分野にも発展させることが可能だと考えています。
私の研究も、最初は音楽療法をシステム化することを目指したものでした。
しかし、音楽療法の分野においても、わかっていない部分・未発見な部分が多いため、いまだその理屈を証明することは難しいのです。
音楽療法の種類
音楽療法には、能動的音楽療法と受動的音楽療法の2種類があります。
・能動的音楽療法
自ら能動的に、楽器を演奏する、歌う、踊ることなどを通じて楽しむことを指します。
こうしてグループなどで活動をすることで、みんなで楽しむことができるし、共感をし合うことができます。
こうした体験が、精神疾患に良い影響を与えると考えられています。
しかし、精神疾患の方達の中には、そもそも能動的音楽を行うような「一歩」が踏み出せない方もいます。
・受動的音楽療法
受動的音楽療法とは、音楽を聞くことで、疾患などの症状を緩和させようとする方法です。
受動的音楽療法は、能動的音楽療法などを行うための一歩を踏み出せない方達でも行える音楽療法と考えられています。
少し前には、クラシックなどの美しい音の振動を聞くことが良いとされ、それで精神を安定させることができると言われていました。
しかしながら現在では、その人ごとに適したジャンルの音楽を聞くことが良いとされ、選曲を誤ると期待される程度の効果が望めないと言われています。
クラシックなどを聞いたことがない層の人たちに、クラシックを流しても響かないことがあるからと考えられています。
どういった選曲が良いのか
少し前に、ヒーリングミュージックというものが流行りました。
全く効果がないわけではありませんが、統計を取ると、精神が安定する効果があったのは6割ほどだったというデータもあります。
それではその人に適している音楽はどうやって判断すれば良いのか。
それには以下の判断基準があります。
①聞いたことがあるかどうか
②曲の好き、嫌い
③そのときの気分に適しているかどうか
④その曲を聞きたいかどうか
いずれも実際に音楽を聞いた人に毎回答えて貰えば、①〜④について判断すること自体は簡単です。
例えば③だと、そのときの気分が前向きであればより前向きな音楽を、悲観的な気分であればより悲観的な曲を選択すると基本的には良いとされます。
しかしながら、対象の人間一人一人に対して、一曲毎にこうした判断を行うのは結構な時間と労力がかかります。
現実的に、一般の人々がこうした判断基準を活用するのは難しいと感じています。
感情に振れ幅を作る方法
適している曲の選び方は他にもあり、悲観的な気分の時に、あえて反対の前向きな曲を聞かせて感情に振れ幅を作るという方法があります。
こうすることで、感情が安定したところに戻ろうとして、結果ちょうどいい精神状態で安定するということがあります。
この方法は、精神が前向きや後向きの、ある一部のところに入り込んでしまって抜け出せない状態の時に効果があると言われています。
応用の可能性
選曲の判断を、脳を計測することでシステムが自動で行うことができれば、その曲を聞きたいかどうかを読み取り、自動で選曲をするといったようなことができます。
こうなれば、うつなどの精神疾患で苦しむ人に対して、より良い選曲で音楽療法を行うことが現実的にできるのではないでしょうか。
また、①〜④や、上記の方法の判断を行うことが難しい、意思表示ができない人に対しても、効果的に音楽療法を行うことができる可能性があると考えています。
こうしたシステムの研究開発を通して、苦しんでいる人の手助けができればと考えています。
また、例え健康な人であっても、今の心理状態に適している曲を自動で選んで流してくれるシステムがあったら、便利で使いたくなるのではないでしょうか。
クラウドファンディングに挑戦する理由
こうした研究を進めるために、新しいパソコンや、実験協力者への謝金、文献費や国内外の学会などに参加する費用など、支出しなければいけない様々な経費が存在します。
しかしながら限られた研究費では、こういったものへ十分に資金を使うことができず、研究活動にストップがかかってしまいます。
ですから、もし私の研究にご賛同いただける方にご支援をお願いできればと思います。
また、今後脳の血流などを計測するに当たって、サンプル数を増やすために、学生等に研究の協力をお願いする予定を立てています。
そのための、情報発信と言う意味合いにおいても、クラウドファンディングの活動を通して、研究の広報を行っていきたいと考えています。
最後に
もし、皆さんが、皆さんの大切な人が、ココロの病にかかり引きこもる状態を余儀なくされた時、または脳梗塞などで声を発することも、うまく体を動かすことも出来ない状態になった時、どのような支援を望まれますか?
私は、その時々のその人自身の心理状態に合った楽曲が提供され、勇気づけられ、一歩踏み出すことを可能にしてくれるシステムが、もし存在するなら使用してみたいと考えると思います。
また、もし、脳梗塞で起き上がれない状態になり、コミュニケーションがほとんど取ることが出来ない状態(声が出せない、体が思うように動かないのでジェスチャーで気持ちを伝えることが困難)に陥ったとき、自身の思いを伝えてくれるシステムがあれば使用したいと考えると思います。
皆さんの支援があれば、これらのシステム構築のための研究の加速度が増し、遠い将来ではなく、近い将来に開発することが出来るようになります。
賛同いただける方、ぜひご助力をお願いいたします。
徳島大学への寄付と税制について
- 国立大学法人徳島大学へのご寄付につきましては、個人からの寄付では所得税の所得控除、住民税(徳島県と県内市町村が条例で指定する寄付金として)の所得控除、法人からの寄付では法人税の損金算入が認められます。
寄附金領収書は本プロジェクト終了日である、2020年01月31日の日付けで発行いたします。税制上の優遇措置をお考えの方は対象となる年にご注意ください。
- 個人からのご寄付
徳島大学に寄付金を支出した場合は、所得控除制度が適用され、(総所得金額の40%を上限とした寄付金額)から2,000円を差し引いた額が課税所得から控除されます。
実際の税控除額は前記の控除額に各人の税率を乗じたものになります。
個人住民税については、(寄付金(総所得額の30%が限度)-2,000円)×10%が寄付控除額となります。
10%の内訳は、都道府県が指定した寄付金が4%、市町村が指定した寄付金が6%となっています。
確定申告期間に所轄税務署で確定申告手続きを行う必要があります。その際に、徳島大学が発行する『寄付金領収書』が必要になります。
住民税の控除適用のみを受けようとする方は、『寄付金領収書』を添えてお住まいの市町村へ「都道府県民税・市町村民税控除申告」を行ってください。
- 法人からのご寄付
法人からのご寄付につきましては、寄付金額全額が当該事業年度の損金に算入されます。
この寄付金による損金算入は、徳島大学が発行する『寄付金領収書』で手続きができます。
振込によるご寄附について
このプロジェクトはクレジットカード決済以外に銀行、郵便振込によるご寄附も受け付けています。
入金確認のための支援者様の振込名義などをお知らせいただく必要があります。銀行、郵便振込によるご寄附の場合は必ずご記入をお願いいたします。
≪手順≫
①リターンのコースを選択し、「寄附するボタン」を押してください。
金額を確認し、配送先住所の入力を終えると、振込で支援するかカードで決済するかを選択できます。
表示される画面に従い、次の事項を入力してください。
振込先、口座番号等は申し込みをいただいたのち、支援者様に自動返信メールにて連絡します。
・振込名義人のお名前
・金額
・寄附コースの名称
・領収書などの送付先住所、電話番号、メールアドレス
②ご注意事項
・振込に際しては振込手数料のご負担をお願いいたします。
・カード決済でご利用できるのは、VISA・MASTERのみとなっております。
挑戦者の自己紹介
伊藤 伸一
所属:徳島大学 大学院社会産業理工学研究部 生体信号処理
役職:助教
私は、大学生時代、学生寮での団体生活、アルバイトを中心とし、学業をそっちのけで社会勉強に勤しんでいました。
そんなとき、大学4年生の時に出会った赤松教授の授業に感化されて脳の活動の計測および分析に関する研究をするに至りました。
赤松先生が授業でおっしゃっていたことの中で、以下の言葉が非常に印象に残っています。
「脳の活動を計測することで、ヒトの心理状態を把握することが可能である」
ヒトの心理状態が把握できると、精神疾患を持つ方々の真の状態を把握することが出来、その方々をサポートすることが出来るシステムが構築できると思いました。
そして、ヒトをサポートするためのシステム構築に関する研究をしたいと切望し、赤松先生の下で研究を開始しました。
具体的には、そのヒトのその時の状態に適合する楽曲を自動で提供する「音楽療法システム」の構築のための研究に従事致しました。
現在では、音楽療法システムに関する研究に加えて、ヒトの意思(質問に対する「yes」「no」)を検出するシステム、「~したい」という欲求を検出するシステム、蓄積ストレスを評価するシステム、睡眠不足状態を把握するシステム、酔いの予兆を検出するシステム、などのヒトの状態を把握し、そのヒトの状態に合わせたサポートするシステムに関する研究に従事しています。
三輪 忠仁さん
長年この分野の研究をされてきた熱意と努力は、素晴らしいです!応援しています。