研究の経緯、きっかけ。(クラウドファンディングを終えて。vol.1)
徳島大学 大学院医歯薬学研究部 代謝栄養学分野 堤 理恵 先生
抗がん剤の副作用による味覚障害のメカニズムを解明する研究の資金を募るため、2017年5月にクラウドファンディングに挑戦された堤先生。
支援金を集めることに成功し、しばらくたった現在、堤先生の研究活動のその後の様子を伺ってきました。
堤先生の部屋に入ると、机の上にラベルのない瓶が何本か並んでいました。
(以下、敬称略)
堤 理恵 先生
---これは、なんでしょう?
堤)こちらはすだちならぬ、ユコウの飲み物です。上勝のユコウを収穫して作りました。
---ユコウってなんでしょうか?香りが良いんですか?
堤)香りはあまりないんですが、特徴的な機能も期待できるので今度これを使ってクラウドファンディングをしようと考えています。
---このユコウも研究に関係するのでしょうか?
堤)そうです。試作の飲み物でラベルはついてないですが、おひとつどうぞ。
果皮からエキスをとり、エキスの芳香を水に溶かし作りました。
フレーバーウォーターみたいなものです。
もともとすだちの果皮なども研究していました。
---こうやって大学の研究成果が実現するのは良いことだと思います。
堤)すだちやユコウの研究を以前からしており、つい最近それが本となりました。
お料理本みたいになっています。
今後のクラウドファンディングではこれもリターン商品に出来たらと思います。
---なるほど~。そのときはまたよろしくお願いします。
それでは、以前クラウドファンディングに挑戦したときの先生のお話を伺いたいと思います。
堤)味覚障害の研究を続けて8年になります。
その間、化学療法の患者さんと耳鼻科の患者さんを対象として研究を行い、そしてなぜ味覚障害が起きるのかということを突き止めようとしています。
世間では今まで味覚障害は亜鉛が少ないことが原因と考えられていましたが、私たちの研究では、舌にある味覚受容体が、抗がん剤によって減っていくことも味覚障害の原因となるとわかりました。
そして、受容体が減っていくのを薬ではなく、うま味成分により防ぐことができることも分かりました。
だから、うま味成分を摂取して受容体を増やす方法を考えました。
対処方法として最初、うま味成分の1つである「グルタミン酸ナトリウム」を直接食事にかけることを試しました。
実際に、がん患者さんにグルタミン酸ナトリウムをお出しすると、中にはコーヒーに入れたり、ピザにかけて食べたりする方などもいて、結局あまりおいしくなくて(笑)、なかなかうまくいきませんでした。
ある時私の研究室の大学院生が、患者さんから「粉じゃなくて、ふりかけにしてくれると思ったのに」と言われ、自分でグルタミン酸ナトリウムを入れたふりかけを作ってみました。
管理栄養士が手作りで作ったので、ふりかけの味もとてもおいしくすることができ、「これなら食べられる」と患者さんからも言っていただいたんですね。
ただ私たちは食品製造許可を持っていませんので、ここで作ったものを世に出すことはできませんでした。
そのため、ふりかけを作ってくれる企業さんをずっと探していました。
試しに何社か開発したふりかけを作って欲しいと声をかけてみたのですが、製造の費用が膨大にかかったり、条件が難しいものだったりで決めかねていました。
ダメもとで、大手企業にメールを送ってみると、すぐに返信をいただき、二日後には大学にきてくれました。
なんと私の前職での教え子がその企業にいて私のメールを見てくれたといういきさつがあったのです。
そこからはずっとこの会社がふりかけを作ってくれています。
医学部にある栄養学科の価値とは何か考えた結果、「科学的根拠のある食品を作る」ことを目標にして研究に取り組み、特許も取りました。
その時にクラウドファンディングの話が来たのです。
そこで今回、うま味成分で受容体が増えるメカニズムを探るために行なっていた、特別なメダカを使った研究でクラウドファンディングに挑戦することに決めました。
研究では、実験により受容体が増えたかどうかを確認する必要があります。
マウスを使う場合は、ベロを出し、解剖し骨まで取りきって、舌の奥にある味蕾細胞を取り出す必要がありますが、最近、食品業界はこのような動物実験は批判されます。
メダカはマウスに比べ小さいですが、口からエラにかけて味蕾細胞がずっとあり、マウスの6倍の味蕾細胞があります。
そこでメダカの受容体を染めて食品や薬剤による反応を目で見て分かるようにすれば、良いのではないかと考えました。
それで今DNA改変により、メダカの口からエラにかけて存在する受容体が光る特別なメダカを作っています。光らせることで受容体の増減を評価できるので、実験のために解剖する必要もありません。
このメダカを作るための機材を準備するのが、クラウドファンディングの目的となります。
特別な光るメダカを作るにあたり、メダカが卵を産んだら一時間以内に、やわらかい状態の卵に「マイクロインジェクション」で受容体が光るようになる遺伝子を組み込みます。
---マイクロインジェクションとはなんでしょうか?
堤)とても細いガラス管を使って遺伝子を卵に注入する方法です。注入したDNAに蛍光ラベルをしておくと卵が孵化して育つと光るメダカとなります。
始めは基礎生物研究所に大学院生がいき、そこでマイクロインジェクションをしたメダカを送ってきましたが、こちらに連れてくると死んでしまったという苦労もありました。
春先が寒かったことなどもあり、管理が大変でした。
今は虫かごのようなサイズのたくさんの水槽を用意しメダカを飼っています。
※基礎生物研究所:愛知県岡崎市にある、国立の研究所で世界中の研究者が集い最先端の研究が行われている。
---そのメダカは肉眼で光って見えるのですか?
堤)そうです。顕微鏡でももちろん見えるのですが、目で見て分かります。
光っていると、目的の遺伝子が入っているか、機能しているかということを可視化してみることができます。
例えば抗がん剤何%という液体の中で光るメダカを飼うと、発光が消えるのかということを検証していきます。
今はそのメダカのシステムを使い、うま味成分が溶けている液体の中で飼育したところ、効果があることが分かっています。
〇次回は、うま味成分や、「おいしい」と「味覚」のお話を掲載いたします。
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