ドイツの若者たちと音楽で交流して奇跡的な友好の歴史を伝えたい
100年前、ドイツ兵捕虜のハンゼンによって、坂東俘虜収容所で第九が日本で初めて演奏されたのは有名です。
しかし、その翌日に、ドイツ兵捕虜と徳島市民が大音楽会で一緒に演奏していたということはご存知でしょうか?
第一次世界大戦停戦前に、捕虜と現地人が同じ舞台で楽器を演奏するというのは、まさに奇跡的な史実です。
平和の象徴「第九」の演奏とともに、後世に語り継ぐべき歴史です。
しかし、それらの事実は地元の人にすら、ほとんど知られていません。
和洋大音楽会で演奏する捕虜楽団(ハンゼン指揮徳島オーケストラ)
このたび、ドイツからのメッセージをきっかけに、ドイツ音楽学校の方を招いて、徳島の楽団などと100年前の和洋大音楽会を再現することになりました。
そして、この音楽会と、ドイツとの友好の歴史をきちんとした形で製本し、日独の図書館に寄贈したいと考えています。
現在まで続く、この奇跡的な友愛の歴史を途絶えさせてはいけません。
日本とドイツのみならず、世界の若い人たちにこの歴史から伝わる平和へのメッセージを発信したいと考え、今回クラウドファンディングに挑戦しました。
奇跡の国際交流の歴史
100年前に徳島でベートーベンの「第九」が鳴り響いた
ドイツ兵捕虜たちがベートーベンの交響曲第9番(第九)を坂東俘虜収容所で日本で初めて演奏したことは映画でも紹介され、広く知られるようになりました。
捕虜であるドイツ兵たちが演奏できた理由は、当時の日本による捕虜政策に加えて、収容所の松江豊寿所長が戊辰戦争に敗れた会津藩士の子弟であったため、敗者の痛みを理解して捕虜たちを人道的に処遇したことが伝えられています。
さらに、徳島には四国遍路に訪れる見知らぬ人々を温かく受け入れる「お接待」の文化が古くからあったことも大きな理由といえます。
平和へのメッセージ ―よろこびの歌
「第九」は第4楽章の「よろこびの歌」と呼ばれる合唱の部分が有名で、日本では年末の風物詩ともいえるほど広く歌われています。
何度も繰り返し歌われるのは「すべての人々は兄弟となる」という言葉。
「第九」を演奏した1918年の時点ですでに3年半にわたる捕虜生活を経験していた彼らは、望郷の想いとともに平和への願いを「第九」に見出したのかもしれません。
もう一つの奇跡「和洋大音楽会」
6月1日の夜に板東で第九を演奏した捕虜たちのオーケストラが、その翌日に徳島市に出向いて地域の人々のために西洋音楽を演奏しました。
そして徳島市民は彼らの演奏を聴いただけではなく、同じ舞台で和楽器を演奏して彼らに聴かせました。
この奇跡的な事実は、現在あまり知られていませんが、忘れてはならないと思います。
捕虜と地域の人々が直接交流してオーケストラまで作ってしまった
他にも、ドイツ兵捕虜と地域の人々との交流の例があります。
板東俘虜収容所で捕虜たちの自由な活動がある程度認められる中、ドイツ兵捕虜のパウル・エンゲルは、徳島の青年たちのために音楽教室を開き、楽器の演奏法を指導しました。
その青年たちは、第九日本初演と同時期の1918年頃に「徳島エンゲル楽団」を結成します。
エンゲルは「このようなことが今の時代にできるのは貴重だ。だから私も一生懸命努力する。」と語って熱心に指導しました。
捕虜と地域の人々が直接交流してオーケストラまで作ってしまったという事実は、世界にも類を見ない友好の歴史です。
歴史は忘れ去られた
しかし、こういった大音楽会や楽団についての資料は、それほど多くありません。
昭和初期まで続いた徳島エンゲル楽団も活動を停止します。
第2次世界大戦の徳島空襲で楽器や楽譜が焼失し、楽団が存在したことさえも忘れられていきました。
私は、こういった歴史は、絶対に忘れてはならない、大切な財産であると思います。
交流の復活と楽団の復活
長い空白の後、一旦途絶えたドイツとの交流は復活します。
きっかけは、雑草に隠れていたドイツ兵の墓を偶然見つけて、献花などの墓守を続けた鳴門の高橋春枝さんという女性の活動でした。
このことがドイツにも伝わり、日本とドイツの友好関係を深めることとなったのです。
また、徳島エンゲル楽団については、2000年に徳島の郷土史を調べていた元中学校長佐藤義忠氏の呼びかけで音楽関係者が集まり、復活させました。
ドイツ兵捕虜と徳島の人々との交流を再現演奏で伝えることを目的として、ほぼ年1回のペースで音楽会などを開催し、演奏活動を続けています。
しかし、徳島エンゲル楽団の活動については、メンバーは毎回入れ替わり、資金もギリギリで回しているため、活動のきちんとした記録と情報発信が満足にできていない状況です。
このままでは、若い世代に伝わらず、かつてと同じように忘れ去られ、ドイツとの友好も消滅してしまうのではないかという危惧があります。
今年の和洋大音楽会開催のきっかけ
ドイツから届いたメッセージ
徳島エンゲル楽団の演奏会情報を提供するホームページに、ドイツから1通のメッセージが届いたのは2017年春のことでした。
送り主は、ドイツの南西部にある、カルフ郡バーデン=ヴュルテンベルク州のヴィルトベルク市立音楽学校の先生。
「第九」日本初演100周年を迎える2018年に、音楽学校の生徒たちとともに徳島を訪問して、徳島エンゲル楽団や徳島の子供たちと共演することは可能かという問い合わせでした。
そのメッセージを見た瞬間、私の頭の中には1年後の日独共演大音楽会のイメージが浮かび、いても立ってもいられなくなりました。
すぐに行動に移したくなり、もちろん大歓迎とドイツの先生へ回答し、家族や楽団メンバーにメッセージのことを話しました。
ドイツから生徒たちが来て演奏する目的は?
どんなことができそうか、何を準備すればよいのかなど、周りの人たちに話をもちかけては相談しながら具体的に計画を考え始めました。
ドイツから数十人の生徒たちがわざわざ徳島に来て演奏する目的は何か?
このことを考えるうちに、1年後の共演音楽会のイメージがさらにはっきりと浮かび上がってきました。
この音楽会の企画は第九日本初演100周年がきっかけになったのは事実です。
しかし、100年にわたる交流が徳島で続いているのは第九が初演されたことが主な理由ではありません。
戦後にドイツ兵たちが残していった慰霊碑を発見して墓守を続けた高橋春枝さんをはじめとする地域の人々の温かい心。
交流を復活させ継続させる力となったのは、第九そのものではなく、その歌詞に織り込まれた友愛の心なのです。
そのことをはっきりと示す歴史的事実を思い出しました。
それがちょうど100年前のもう一つの奇跡、「和洋大音楽会」です。
ドイツの人たちが西洋楽器、日本の人たちが和楽器を演奏する和洋大音楽会を再現し、さらに日独共演オーケストラの演奏と合唱を取り入れ、最後に「第九・よろこびの歌」を青少年のオーケストラと合唱で演奏する案を考えたことで100年の交流を記念するイベントの構想が固まりました。
奇跡の国際交流「和洋大音楽会」再現プログラム
1. 邦楽 千鳥の曲 春の海 童夢 (徳島邦楽集団)
2. 日本舞踊 元禄花見踊り ほか (音羽菊公社中)
3. ゲスト演奏 水上の音楽 ヘンゼルとグレーテル序曲 赤とんぼ (ヴィルトベルク音楽学校オーケストラ)
4. 合同演奏 ドナウ川のさざなみ 友愛の花 歓喜の歌 (ヴィルトベルク音楽学校・徳島エンゲル楽団・徳島大学学生OB有志・徳島少年少女合唱団 ほか)
多額の費用
実行に際して一番の問題点だったのは、交通費や滞在費をはじめとした多額の費用でした。
経済的理由で来日をあきらめるドイツの生徒もいる中、なんとか全員そろって徳島に来てほしいと願い、日独双方が各種の助成に応募するなど資金調達に励みました。
その努力の結果、ある程度の自己負担は伴いますが、今年の11月3日に演奏会を実施できる見込みがつきました。
しかし、各種助成金は使途が定まっており、開催の準備に多大な労力も必要となることから、今回のイベントをきっちりとした形で記録・整理することまではできません。
プロジェクトの目的
支援金の使い道 ~製本して、図書館等に配布したい!~
今回の音楽会を開催するにあたって、具体的に足りないところは、写真撮影と整理、解説文の執筆・翻訳、Webページ作成、印刷・製本、各地の学校や図書館への送料などの費用です。
記録物の作成は少額でも可能ですが、資金が増えるとともに印刷体を配布できる範囲が広がります。
インターネットで簡単に情報が世界にいきわたる時代ではありますが、ただ公開しているだけでは目的とする世界の若い世代に見てもらうことは困難です。
長期間の使用に耐えるようにしっかりと製本した印刷物を学校や図書館に配置して手に取ってもらうことで、少しずつではあっても確実に次世代への継承が実現できると考えています。
音楽による国際交流の歴史を世界平和へのメッセージとして伝えたい
今回のクラウドファンディングプロジェクトでは、100年前の奇跡から始まった友好の歴史を次世代に受け継ぎ、世界に発信することを目的としています。
ドイツから訪れる音楽学校の生徒たちと徳島エンゲル楽団や徳島少年少女合唱団、徳島大学の学生たちなどの青少年を含む日独共演のほか、邦楽と日本舞踊も取り入れ、それぞれにドイツの生徒も参加するという趣向を凝らした「 和洋大音楽会再現演奏会」を映像を含む資料として記録し、解説を加えて日独(英)語版の報告書を作成します。
インターネットで公開するとともに、各国語版の冊子を印刷製本し、関連地域の学校や公立図書館を中心に各地に広く配布したいと考えています。
日独両国および可能であればそれ以外の世界各国の子供たちや若い世代に、音楽による国際交流の歴史を世界平和へのメッセージとして伝えたいと願っています。
100年に一度の大音楽会をその場限りのイベントで終わらせたくはありません。
この記録をできるだけ多くの若い人たちに届け、これからの100年につなげるために、皆さまのご支援をお願いいたします。
徳島大学への寄付と税制について
- 国立大学法人徳島大学へのご寄付につきましては、個人からの寄付では所得税の所得控除、住民税(徳島県と県内市町村が条例で指定する寄付金として)の所得控除、法人からの寄付では法人税の損金算入が認められます。
- 個人からのご寄付
徳島大学に寄付金を支出した場合は、所得控除制度が適用され、(総所得金額の40%を上限とした寄付金額)から2,000円を差し引いた額が課税所得から控除されます。
実際の税控除額は前記の控除額に各人の税率を乗じたものになります。
個人住民税については、(寄付金(総所得額の30%が限度)-2,000円)×10%が寄付控除額となります。
10%の内訳は、都道府県が指定した寄付金が4%、市町村が指定した寄付金が6%となっています。
ご寄付された翌年の確定申告期間に所轄税務署で確定申告手続きを行う必要があります。その際に、徳島大学が発行する『寄付金領収書』が必要になります。
住民税の控除適用のみを受けようとする方は、『寄付金領収書』を添えてお住まいの市町村へ「都道府県民税・市町村民税控除申告」を行ってください。
- 法人からのご寄付
法人からのご寄付につきましては、寄付金額全額が当該事業年度の損金に算入されます。
この寄付金による損金算入は、徳島大学が発行する『寄付金領収書』で手続きができます。
※寄付の受付日は、プロジェクトの終了日である1月13日付となります。
振込によるご寄附について
このプロジェクトはクレジットカード決済以外に銀行、郵便振込によるご寄附も受け付けています。
入金確認のための支援者様の振込名義などをお知らせいただく必要があります。銀行、郵便振込によるご寄附の場合は必ずご記入をお願いいたします。
≪手順≫
①リターンのコースを選択し、「寄附するボタン」を押してください。
金額を確認し、配送先住所の入力を終えると、振込で支援するかカードで決済するかを選択できます。
表示される画面に従い、次の事項を入力してください。
振込先、口座番号等は申し込みをいただいたのち、支援者様に自動返信メールにて連絡します。
・振込名義人のお名前
・金額
・寄附コースの名称
・領収書などの送付先住所、電話番号、メールアドレス
②ご注意事項
・振込に際しては振込手数料のご負担をお願いいたします。
・カード決済でご利用できるのは、VISA・MASTERのみとなっております。
クラウドファンディング挑戦者
徳島大学ドイツ兵
俘虜研究会 |
徳島大学ドイツ兵俘虜研究会は、第一次世界大戦下の徳島・板東俘虜収容所におけるドイツ俘虜の活動や地域との関わりを研究し、戦時下の友好的交流の史実を顕彰するとともに、その文化遺産を後世に伝えることを目的としています。
研究成果を講演・展示・音楽会・紙芝居などの形で広く一般市民や学生・子供たちまでの幅広い世代を対象として公開することで、地域社会への周知と次世代への継承を目指しています。
特に音楽に関しては、市民団体「エンゲル・松江記念市民コンサート委員会」主催で2000年から15年間継続してきた「エンゲル・松江記念音楽祭」を引き継いで徳島大学で開催しています。
この演奏会では、徳島大学の学生や最近の卒業生を中心に若い世代も活躍しています。
|
井戸慶治 |
徳島大学大学院社会産業理工学研究部 教授・鳴門市ドイツ館史料研究会会長
愛媛県出身。
専門分野はドイツ文学ですが、十数年前から第一次大戦時のドイツ兵捕虜に関心を持ち、この研究にも携わっています。
収容所で捕虜が発行していた新聞『ディ・バラッケ』(板東収容所)、『トクシマ・アンツァイガー』(徳島収容所)を、上記「史料研究会」の先生方と翻訳してきましたが、現在は『ラーガーフォイアー』(松山収容所)の翻訳と松山収容所の調査をおこなっています。板東関連では第九の演奏がよく話題になりますが、他の多くの楽曲の演奏や演劇・美術・講演・スポーツなど多様な文化活動にも注目すべきものがあります。
|
石川栄作 |
放送大学徳島学習センター センター所長・徳島大学名誉教授
高知県出身。
昭和53年4月にドイツ語教員として徳島大学に着任し、39年間ドイツ語・ドイツ文学のみならず、日本文学なども取り入れて、さまざまな授業を担当し、昨年3月末をもって定年退職、今年4月からは放送大学徳島学習センターで所長を務めています。
専門はドイツ中世文学とワーグナーのオペラで、ワーグナーにとってベートーヴェンの『第九』は特別な存在であったことから、『第九』にも興味を示し、ドイツ俘虜たちが『第九』を日本で初めて演奏した板東俘虜収容所の研究にも携わってきました。
平成12年1月より徳島日独協会の事務局も担当し、長年日独間の交流にも携わってきて、現在に至ります。
|
南川慶二 |
徳島大学教養教育院 教授
和歌山県出身。
子供の頃にバイオリンを習ったものの、化学に興味が移って徳島大学工学部に入学、学生時代に合唱に熱中しました。
卒業後に紆余曲折を経て工学部に教員として戻りました。現在は教養教育院に所属し、基礎基盤教育分野を担当するほかに、徳島大学交響楽団およびリーダークライス(混声合唱団)の顧問を務めています。
徳島エンゲル楽団の演奏会には2006年から合唱団員として参加してきました。2015年から徳島大学ドイツ兵俘虜研究会の事務局を担当し、エンゲル・松江記念市民音楽祭の運営に携わって現在に至ります。
|
挑戦者の自己紹介
kotoriさん
遅くなりましたが、応援しています。
残念ながら、11月3日は行くことができませんでしたので、音楽を通した国際交流の記録、是非読んでみたいです。
板東俘虜収容所が国際交流のきっかけとなり、今後も続いていくことを願っています。